ブログのまくらを過去の淡い思い出話にすると、最後まで読まれやすい。

どうも鳥井です。

「ブログの冒頭部分は、落語のまくらに似ている」と言っていたのは、確か佐々木俊尚さんだったと思います。

人はまくらを読んで、その文章を最後まで読むかどうかを決めて、まくらで惹かれなかったらすぐに離脱してしまう。それが今のブログ論壇の現状だ、と。

それを聞いて以来、他者のブログ(文章)を読む時に、まくらで何を書いているのか、かなり意識的に読むようになりました。

そして、最近流行っている書き方をひとつ見つけたので、今日はそのご紹介をしてみようかなと思います。

自分の過去の淡い思い出を、まくらにする。

その書き方とは、題名にも書いてあるように「自分の過去の淡い思い出をまくらに持ってくる」という書き方です。

百聞は一見に如かずだと思います。まずは著名な編集者であるお三方の最近のブログ(note)を見てみてください。

全て書き出しからの引用です。

昔、料理がすごく上手な女の子と付き合っていたことがある。特別な材料を使うわけでもなく、冷蔵庫の中にあるものを組み合わせて、「えっ」っていうくらいおいしいものをつくる。不思議だったのは、彼女がいれると、ただのコーヒーですらとてもおいしくなるのだ。

引用元:料理の上手な女の子とディープラーニングと囲碁の関係について|加藤貞顕|note

どんな風に虹を見たら、幸せな気分になれるだろう?
 学生時代、僕は、一人旅をしては彼女に「この景色を一緒に見たら楽しかったと思います」なんて手紙を送っていた。先日、中東に出張へ行ったのだが、ギリシアレストランがたくさんあって、妻と結婚前にギリシア旅行へ行こうと約束をしていたのに、あれよあれよという間に子供が3人できて、僕は起業していて、その約束を果たせていないことを思い出した。それで、妻にLINEをした。

引用元:虹を見た時、あなたは何をする?|佐渡島庸平|note

「なんか損した気分」になることがある。
たとえば、あれはアメリカーノというのだろうか。通常のコーヒーを注文したつもりで待っていたら、エスプレッソをお湯で薄めたやつを出されることがある。そっち方面に不勉強なぼくは、それをイギリスの地ではじめて飲んだ。ふざけるなイギリス、なんたる愚食の国か。と、おのれの不勉強を棚に上げつつ憤慨し、二度とこんな国でコーヒーは飲むものかと心に誓った。

引用元:わたしの「なんか損した気分」。|古賀史健|note

いかがでしたでしょうか?見事にお三方とも、自分の過去の思い出話から始まっていますよね。

肝は、その情景が読者の頭の中に思い浮かびやすいこと。

まくらで、いきなり抽象的な話から始めてしまうと、人はなかなか引き込まれてはくれません。

普段から、SNS上などでコミュニケーションをとっていて、コンテキストを共有していれば「◯◯さんの書いた記事だ」と反応して、いきなり抽象的な話から始まっても最後まで読んでくれるかもしれません。

しかし、コンテキストを共有していない初見の人に、いきなり抽象的な話を持ち出してみたところで、「えっ?何の話?」となってしまい、最後まで読んでもらうことはなかなか難しい…。

一方で、誰もが何となく似たような場面を経験したことがある、過去の淡い思い出話というのは、読み手の頭の中でも情景描写が容易なため、誰でも一気に引き込まれていきます。(特に、幼少期〜学生時代ぐらいまでの思い出。)

キュレーション系記事が大量にネット上に溢れた揺り戻し?

そして、なぜ今この書き方が持て囃されているのかといえば、きっとキュレーション系の記事の揺り戻しではないのかなと。

キュレーション系の記事って、どうしても没個性的にならざるを得ません。書き手の属人的な過去の思い出話を、まくらに持ってくるということはできないんですよね。

もちろん、キュレーションに限らず、ニュース系コンテンツでも同様です。

僕らはここ数年で、そんなドライなコンテンツに触れる機会が一気に増えました。

だからこそ、あまりにも属人的すぎる人間らしいウェットな書き出しから始まる記事は、いま新鮮に感じてしまい、その分引き込まれやすいのだと思います。

テレビでも、ニュースやエンタメ情報系番組ばかり見ていると、ドラマやドキュメンタリー番組などが突然恋しくなってしまいますよね。

きっと、あの感覚にも近いのかもしれません。

最後に

他にも、最近まくらが上手だなあと思ったのは、サイバーエージェントの藤田晋さんのブログ。

このブログ記事も、あまりに具体的な描写から始まるものだから、「ん?一体何が起きたんだろう…!?」というある種ドラマを見ているかのような没入感がありました。

僕は、こういったストーリー仕立ての書き方や、自分の過去の思い出をさらけ出す系の書き方がどうしても苦手なので、結論や要点を持ってくるタイプの書き方しかできません。

しかし、今の潮流から考えると、ブログのまくらは、自身の過去の淡い思い出から始めると良さそうです。

それも、できるだけ具体的な情景が思い浮かべやすいものから書き始めてみると、グッと読者の関心を引き寄せることができて、最後まで読んでもらえる可能性が一気に高まると思いますよ。

そういった文章を書くのが得意だよー!という方はぜひチャレンジしてみてください。

それでは今日はこのへんで。

ではではー!

[追伸]弊社の「灯台もと暮らし」では、これに似た手法を「立花メソッド」と呼んでいます。詳しくはこちらの記事を御覧ください。
これからの“町の本屋さん”が生き残るために持つべきものとは?|荻窪「Title」店長・辻山良雄さん | 灯台もと暮らし

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