柳井正著『現実を視よ』を読んで

最近、日本への出張から戻ってきた社長が購入してきてくれた柳井正著『現実を視よ』を読みました。

自然に引き込まれる内容なので、集中して1時間半ぐらいで一気に読了することができました。

まず一番最初に思ったことは、この本の中に書いてあることに新しい発見は「なかった」ということ。そう、何一つなかったんです。

もちろんこれは悪い意味ではなく、多くの人が今まで見てきたモノ・学んできたモノがこの本にすっきりとシンプルにまとめ上げられているということです。

確かに、文中ではグラフやデータも多数引用していましたが、ココに掲載されている数字は日本のトップ企業の社長だからこそ手に入るというような希少性の高いものはなく、誰にでもカンタンに手に入るものばかりでした。それは普段から一般的に情報に触れていれば、自然と目に入ってくるようなものばかりです。

ソレらを引用してきて、柳井さんが再三主張しているテーマは、ただひとつ。

「お金を稼げ!成長し続けろ!その先に日本や世界、更には宇宙の進化に貢献できるのだ!」と。

まさにその通りだと思います。
確かに柳井さんのやり方に反発する方々の意見も一方では存在するかと思います。柳井さん自身も、この本の中で自分のアンチについて語っている部分がありました。しかし、やはり人も企業も上を目指すことを辞めてしまい現状維持に甘んじるということは、それはもやは「現状維持」ではなく「後退」を意味することなんだと思います。

そして、僕がこの本を読みながら特に強く思ったことは、失敗を恐れて知識を貯めこむよりも、これぐらいの知識(事実認識)があれば、後はもう世界に飛び出すべきだということです。
問題は、やるかやらないかです。
ソレ以上でも以下でもない。

ちょっと話は横道にずれてしまいますが、アジアは間違いなくスピード感が一番重要だと思います。欧米がどうかはわかりませんが、アジアでは緻密な分析を行い、何度も議論を繰り返し、石橋を叩いて渡るようなことをしているうちにあっという間に先を越されてしまいます。
無茶をしろというわけではないですが、日本の幼稚園に入って日本の大学を出るまでに教えこまれた決断力、実行力では絶対的に遅いということです。「いける!」と思えば徹底的に集中してまずはつくり上げる、そして実行してから微調整していく。まさにそのバランス感覚が一番重要になってくるのではないかと思います。

話がすこしズレてしまったので、本の内容に戻すと・・・

僕は柳井さんは物事をものすごくシンプルに捉えている人だと思います。そしてそれと同時に、徹底的に考え抜いている人でもあると思います。

この本の章の題名に、邱永漢さんの名前を持ちだしてくるところにもソレが如実に現れていると言えるでしょう。

しかもそれは『成功は一日で捨て去れ』の時から変わらない態度であり、書籍の中で引用されている人物(柳井さんが尊敬する人物)も以前から全く変化していません。

それは例えば、松下幸之助、ピーター・ドラッカー、邱永漢という面々です。

柳井さんは、彼らが生前主張したシンプルなロジックを、純粋に現代社会で実行しているだけであり、ソレが今現在のUNIQLOを生んだのは間違いないありません。
「何も複雑に捉える必要はない、彼らに従えば成功する!」と、この考えを地で行く人でもあると思います。

この本はハードカバーでそれなりの厚さですが、言っている内容としてはA4一枚に十分に収まります。

更に若い人に向けて言っていることにフォーカスすれば、もっと少なく一行で収まるでしょう。

「一歩前に踏み出せ!日本を飛び出せ!失敗を恐れるな!若いうちに沢山経験しておけ!」純粋にただそれだけだと思います。

しかし、ここまで書いておきながら、ここから完全に態度をひっくり返しますが、僕らは柳井さんを参考にしてはいけない。

ましてや松下幸之助や本田宗一郎、盛田昭夫のような方々の方法も参考にしてはいけない。
・・・いや、正しくは「鵜呑みにしてはいけない」と言うべきでしょうか。

僕は、AppleやSoftBank、UNIQLO、日本電産のようなトップダウンでワンマン経営のどデカい企業は、ジョブズ・孫さん・柳井さん・永守さんの世代で終わると思っています。

もちろん会社自体がなくなるわけではなく、存続はし続けるでしょう。しかし、ソレを経営するのはあくまで経営のエリートであり、海外の有名なMBA校を出たような人々、そしてもっと遠い未来にはコンピューターがこのような企業を経営していくのでしょう。

これからの時代、彼らのようなクレイジーな人々は、もっともっとクリエイティブなことを始めると思います。それはもっと小回りが効くような・・・。

企業が人を使うのではなく、人が企業を使うようになるはずです。

とまぁ、ここまで書いていくと何を言っているのかさっぱりわからないという方も居るかと思うので、この続きはまた別の回で。。。

ではでは〜。

最後にちょっと蛇足。
この本で何度か柳井さんが陰ながら主張していたことがひとつあります。
それは「毎日ノートに自分の思ったことを書く」ということ。
数々の自己啓発書で語られてきたこの内容は、もう手垢が付きすぎた内容だと考え、柳井さんはあくまでサブ的な主張として書いていたんだと思われますが、やはり何度か強調していたところをみると、柳井さんもその効果をしっかりと実感しているんだろーなーと。
日記やノートの類いはやはり侮る無かれってことか・・・。

あ、Kindle版もあります!

鳥井弘文
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