函館を出たのは15歳の時でした、どうも鳥井(@hirofumi21)です。
2013年の12月上旬に函館に蔦屋書店が出来る予定です。あの代官山にある蔦屋書店と同じ形式で、代官山に続く2号店が函館になるようです。個人的には大変嬉しい限りですが、これが成功する確率は正直半々だろうなと…。
今回は、その理由について少し書いてみようかなと思っています。
函館蔦屋書店について書こうと思ったきっかけ
なぜ突然、これについて書き始めたかというと、最近話題になっていたこちらの記事を読んだから。
僕がいっさい図面を見ないから、代官山 蔦屋書店ができた:日経ビジネスオンライン
この記事、各方面から色々と賞賛を受けていたのですが、正直自分にはあまりピンときませんでした。
たぶん、「社長は口を出さない。経営に専念する」というところが評価されたポイントなんでしょう。でも、小さなベンチャー企業でしか働いたことがない自分にとっては、上から口を出さずに任せてもらえるということが、どれだけ恵まれていることなのかは正直わかりません。
逆に、上から口を出してもらえることが羨ましいなと思ったことは今まで何度かありましたが……結局互いにないものねだりなんでしょうね。
まぁこのへんの話は置いといて、ここで社長が主張していたのが、“施主や経営者がやるべきは、「コンセプト」をつくること。そしてその「コンセプト」を、実際にデザインしたり図面をひいたりするプロに伝えて、価値観を共有すること。具体的な方法には決して口出ししない。”ということです。
函館蔦屋書店のコンセプト
先日、函館蔦屋書店が出来るまでの経緯を綴った以下の本も読了しました。この本の中でも、今回の函館蔦屋書店は今までのカルチュア・コンビニエンス・クラブ式同様、コンセプト重視につくられているという事が書かれてあり、今回の日経の記事と繋がったというわけです。
今回のコンセプトは「地域の活性化を目指し、コミュニティが再生する場を創造をすること、そして市民の憩いの場となるブック&カフェをつくろう!」的なコトみたいです。
大変素晴らしいコンセプトで、もし本当に蔦屋書店がそんな場を担ってくれたら、函館出身としては嬉しい限りです。
ただ、代官山蔦屋書店も何度か行ってみて、その同様のスタイルのものが、果たして函館で受け入れられるのか…?疑問に思うところが幾つかあるんです。
お店に人が集まっても、置いてある本は手にとってもらえるのか?
まず1つ目の疑問はこちら。
代官山蔦屋書店に行くと驚かされるのが、販売されている本の数、そして種類の豊富さです。
最新の本から、「この本ここ以外にどこに売ってるの!?」っていうような本まで幅広く置かれています。いわゆる専門書ですよね、しかもおしゃれ系の。
ここで少し話がずれてしまいますが、自分が高校生だった時、今から7〜8年ぐらい前に、函館の市民図書館が改装されました。
中は非常にきれいな空間で、蔵書の数もそこそこ多い。そして、ここのコンセプトもいわゆる「市民の憩いの場」系のコンセプトでした。
かなり期待感高まる図書館ではあったんですが、実際に行ってみると、ちょっと残念な光景が広がっていました。
中では中高生が話していてガヤついているし、本を読んでいる人も、漫画や雑誌ばかり。机に突っ伏して寝ている人も多かったです。とにかく「ザツ」な印象を受けました。その光景を目の当たりにした以降、あの図書館には行っていません。
もし函館の蔦屋書店が代官山のように、特殊な本ばかり置いてしまったら、一瞬手には取ってもらえると思いますが、結局買わないと思います。
それよりも、未購入の本を持ち込めるスタバに、雑誌や漫画、芸能人の暴露本などを持ち込んで読み耽り、そのまま買わずに帰るという感じになるでしょう。
函館は集まる人々がどこのお店に行っても全て同じ。
代官山の蔦屋書店に行くと、ものすごくわかりやすい感じで客層が偏っていることがわかります。
いわゆる、「このオシャレな空間を楽しみたい!本を読むのが大好きで、今日はちょっといつもとは違う本に出会いたい!」っていう人達が集まっていて、「あぁ、こうゆうコミュニティの人達に向けられて作られているお店なんだな。」って事がすぐに理解できます。お店づくりとしては大正解といえるでしょう。
では、函館で同様のものを作った時に、そのような人々が本当に集まるのでしょうか。
函館の人口は30万人切るぐらいしかいません。周辺市町村を合わせても、その数はたかが知れています。
かたや東京都の人口は1300万人。神奈川や埼玉から訪れる人も含めれば相当な数でしょう。
東京にいると本当に驚かされますが、地域ごとに居る人間が全く異なります。原宿と表参道〜青山なんて、隣合わせであれだけ距離が近いのに、それぞれの場に居る人間は全く違います。
でも函館はそうじゃない。
極端な話、ドン・キホーテの客層も、百貨店の客層も同じなんです。いやそこまで言うと語弊がありますが、スタバだろうがマクドナルドだろうが同じ“市民”がいて、町中のどの商業施設に入っても、来る“市民”は同じなんです。
最後に
蔦屋書店の最大の功績は、代官山という絶妙な立地に、しかも駅から少し離れたあの場所に、一昔前の“ハイブランドの路面店”と同じような空間を創りだしたことだと思います。
そこにいくことだけで、人々の気分が上がる、ステータスと感じられるような場所。
それと同様の空間を函館につくっても、人が集まる可能性は高いでしょうが、同じ雰囲気が創造できるとは思えません。
最初にも書いたコンセプト「地域の活性化を目指し、コミュニティが再生する場を創造すること、そして市民の憩いの場となるブック&カフェをつくろう」は、代官山とは完全に似て非なるものを創りあげなければ、実現されないと思います。
カルチュア・コンビニエンス・クラブがこの問題とどう向き合い、函館蔦屋書店が具体的にどのような空間として提案されるのかが、試される場となるでしょう。
ぜひ函館で成功させて、「同様の形態のものを日本全国の地方都市に100店舗出す!」という計画を実現して欲しいと願います。
これにより、「行政ではなく、企業が地方を活性化させた」という初めての大きな成功モデルが出来上がるかもしれないので…。
今から期待が膨らみます!
それでは今日はこのへんで。
ではではー。
鳥井弘文
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