POPEYE11月号「大人になるには?」特集にみるリリー・フランキー現象

POPEYE (ポパイ) 2013年 11月号 [雑誌]

どうも鳥井(@hirofumi21)です。

先日Twitterにも書きましたが、今月号のPOPEYEが、ものすごく攻めたなーと。ある種の感動すら覚えました。「カレーと本」「チープシック」「フランス」と続いてからの「大人になるためには?」ですからね。

今、若者向けメンズファッション雑誌の中で一番勢いのある雑誌は、やっぱりPOPEYEだそうです。実際の販売部数だけに限らず、渋谷原宿近辺のショップスタッフさんや美容師さんに聞いても、皆口をそろえて「POPEYEだ」と答えるので、それは間違いないんでしょう。

ただ、これだけ色々と提案されると、今の若者は辛いだろうなーって。POPEYEは「シティボーイ」を軸にしていて、その外見はものすごく物腰柔らかく提案しているように見えますが、これはきつい。何がきついって、押し付けがましいんですよ。「君たちは、こうであれ!!」っていうのが。

ということで今回は、このPOPEYEを読みながら、僕なりに色々と思ったところを少しだけ書いてみたいと思います。

大人になるには?特集

まずは、とやかく言わずに冒頭に掲げられた文章を引用してみましょう。

ほっといても人は大人になる。
それを言っては今回の特集は始まらない。
大人になりたい、と思った時点でもしかして
君はもう、立派な大人なのかもしれない。
まぁ、そんな難しいことを話しても大人げないので
編集部のいい大人が、大人になるための100のことを考えてみた。
それでは、まずは大人の着こなしから。
何を着ようが、ほっといてくれと言う君は子供だ。

そして、この「大人の着こなし」で提案されているアイテムが以下です。

  • チェスターフィールドコートとサックススーツ
  • コーデュロイジャケット
  • M−65ジャケット
  • トレンチコート
  • ツイードジャケット
  • ワードローブ
  • ネイビーブレザーとグレーのフランネルパンツ
  • チルデンセーター
  • デニム(リーバイスのビンテージ)

並んでいるアイテムを見て、みなさんはどう思うでしょうか。僕は…えーっと、後半で語ります。

大人になるための100のこと

さて、2つ目の特集がコレ!最近のPOPEYEの特徴でもありますが、「ファッション」に限らず、「カルチャー」にもガッツリと力を入れていて、「大人になるための100のこと」と銘打って、色々な「大人の所作」が紹介されています。

どれも、POPEYEが好きそうでお金が掛かりそうな提案ばかりだったのですが、その中でも「これはいい提案だ!」って僕が思ったものを、ここでは幾つか紹介したいと思います。

  • 次々に好きなことを見つけて実践したい
  • 洒落た世間話を楽しめる
  • 大事なものはむき出しで持たない。
  • 自分の匂いを持っている。
  • 他人のスタイルを否定しない。
  • タクシーという存在に深く感謝をする。
  • 冒険心の満たし方を心得る。
  • 旬の食べ物を味わう。

詳しくはぜひ雑誌のほうを読んで欲しいのですが、このへんは素直に素敵だなーと思いました。

ただ、やっぱり100個中70個ぐらいは懐古主義でお金のかかることでしたね。いやー大人になるって難しいんです。

大人の街

たぶん、この上2つの特集までであれば、今回は記事にしなかったと思います。ただ、今回は更に力作の特集が続いていました。

それがこの「大人の街」。

東京の街とブランド(セレクトショップ)を掛けあわせて、その街らしい着こなしを提案しようというものです。もちろん着用しているモデルさんたちは、POPEYEらしい、まだ少年のあどけなさが残るハーフな顔立ちの子たちですよ。

若者にとっては決してリアルとは言い難いけど、ある程度憧れを持ちそうな街を選んで「これが大人だ!」と言わんばかりの選び方は、さすがだなーと。

ぜひスタイリングや写真も一緒に見て欲しいのですが、取り上げられていた街とブランドは以下です。

  • 有楽町駅前✕ユナイテッドアローズ
  • オーバカナル✕Cartier
  • 並木通り✕Coach
  • 銀座ビヤホール✕Brooks Brothers
  • 日比谷バーデンバーデン✕Levis
  • 銀座7丁目角✕Macintosh
  • 有楽町DNタワー21✕CANADA GOOSE
  • 丸の内から大手町✕EMPORIO ARMANI
  • 外堀通り仮囲い前✕Adam et Rope
  • 日比谷シャンテ前✕Carhartt WIP
  • 数奇屋橋公園✕Dickies
  • 日比谷通り✕無印良品
  • 新有楽町ビルヂング✕SHIPS Jet Blue
  • 銀座の地下✕Ganzo

ちなみに東京論でいうと、以前こんな記事を書いたこともあります。

参照:『いま東京と東京論を問い直す』も新しくて面白い! | 隠居系男子

リリー・フランキー現象ここに極めり。

さて、ここからが本題。僕はこうゆう現象を自分の中で勝手に「リリー・フランキー現象」と呼んでいるんですが・・・

あ、先に言っておきます、リリー・フランキーさんをディスるわけじゃありません。リリー・フランキーさんのあの独特な雰囲気は本当に唯一無二だなと思いますし、決してガツガツしていないのに、時代を感じとる嗅覚は素晴らしいと思います。

ただ、今の若手俳優陣の中に、「リリー・フランキーさんを崇拝しておけばOK」という節、ありますよね。代表的なところだと、瑛太さんとか小栗旬さん、三浦春馬さんあたりでしょうか。

きっと彼らは、本気で尊敬しているんだと思いますし、彼らとリリー・フランキーさんの間には本物の信頼関係が構築されているんだと思います。

今のように、先行きが不透明な時代、混沌とした社会の中では、若者がリリーさんのような人を求めてしまう気持ちは、僕も今25歳の若者なのでものすごくわかります。

ただ、最近は「社会が間接的にそうさせている」っていう風潮もどことなく感じたりしませんか。「リリー・フランキーであれば、ガツガツしていないし肩肘張ってないからOK。それになんとなくセンスも良さそうじゃん。だから目立ちたくないならそのへんと絡んどけ!そしたら叩かないから。」的な…。

そして、今の日本において、若者に対して訴求しようとしている“モノ”は、このリリー・フランキーさん的なポジションを狙いに来すぎです。

特にリニューアル後のPOPEYEには、まさにそれにに近い何かを感じとってしまう…。

若者の先の見えない不安感だとか、情報が多すぎて何が本物かがわからないっていう戸惑いみたいな複雑な感情を、上手く利用している感じがなんだかすごく落ち着きが悪いんです。

何度も言いますが、いいんですよ!POPEYEみたいな雑誌があっても!!ネットが普及して1000文字を切るコンテンツが主流の中で、これだけ作り込まれた雑誌が毎月出ることは本当に良いことだと思います!

ただ、コレが今の若者のメインストリームに結果的になってしまっていることに、今の若者のファッションシーン、更には日本の空気感に、僕は危うさを感じてしまうんです。

こんな時代だからこそ、双方向性を上手く取り入れて欲しい

ポパイの編集の仕方は、この雰囲気が好きな人達が集まって、本当に好きなモノを届けよう!としていることが伝わってきますが、完全に一方通行ですよね。「知らない君たちに、僕らが答えを教えてあげよう」というような。

もう何度も書いてきていますが、これから大事になってくるのは「双方向性」だと思うんです。だけど、今の日本のファッションシーンには、全く双方向性が存在しない。

いや、双方向性を目指そうとした結果、どこも「スナップ」と「読モ特集」に終始してしまい、それに中指を立ててできた雑誌が、リニューアル後のPOPEYEなんでしょう。でもこれも、一方的に大人の価値観を押し付けているだけのように見えてしまいます。

「それはあなた達の当時の答えであって、今の彼らの答えではないはずだ。彼らは彼らなりの答えを探し出す権利があって義務もある。そして、そのお手伝いをするのが雑誌の本来の役割だろう。」と僕は思ってしまいます。

あくまでも、若者が向いている方向を大きく取り上げてあげるのが若者向け雑誌の役割であり、「こっちだ!」って大人が先導するものじゃないと思う。

それを、ここまで答え書きまくりな参考書のような雑誌を、毎月提供するのはいかがなものだろうと?問題(提起)よりも回答の冊子の方が分厚いのは受験の参考書だけで十分です。

Begin」とか「Lightning」とか、そうゆうところでやってくれる分には全然構わないんですけど、老舗の若者向け雑誌が、その看板掲げてやることじゃないはずです。

ファッション業界が不況だからこそ、そうゆう余裕もなくて、若い層にも売れるものを提案しないといけないというのはわかるけど、だからこそ愚直に双方向性を目指して欲しい。その上で、今までになかった新しいカタチの市場を作り出して欲しいなと思うんです。

最後に

以前、この記事「瀧本哲史著『僕は君たちに武器を配りたい』オーディオブック版のススメ!」でも紹介した、アンチグローバルマッチョ論を書いたうさみのりやさんがTwitterでこんなことをつぶやいていました。

これと同じ危うさを、POPEYEが今一番勢いがあるという話から、感じてしまったわけです。

エアジョーダンもエアプレストも、当時僕らは自分たちがそれをカッコイイと思って選んでいました。

でも、今の若者達はニューバランスやALDENを本当にカッコイイと思って選んでいるんでしょうか。「これが参考書に載っていた答えだから選んでいます!」というようにしか僕には思えないんです。

若い子たちの不安や弱みをグッと握って、「これを読んで、おじさんたちのような大人を目指せばいいんだよ。」と透けて見えるのがどうしても気になってしまって、今回書かずにはいられませんでした。

作っている側も先行き不透明で不安だからこそ、「自分たちの時代の正義」を振りかざしてしまうのでしょうが、そこをぐっと我慢して今の子達の“リアル”を一緒に模索してくれるような雑誌が、一番勢いのある雑誌であって欲しいなと切に願います。

それでは今日はこのへんで!

ではではー!

鳥井弘文

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