田坂広志インタビュー「目に見えない資本」という新たな、しかし、懐かしい価値。

どうも鳥井(@hirofumi21)です。

先日このブログでご紹介した「未来を変えるデザイン展」というイベント。

参照:「個人が0を1にしていき、大企業が1を10にしていく」~社会課題を解決できるのは誰なのか~ | 隠居系男子

こちらのイベントで配られていた冊子に掲載されていたソフィアバンク代表・田坂広志さんのインタビュー「目に見えない資本」というのが、非常に興味深かったので、今日はこのインタビューの内容をご紹介してみようと思います。

田坂広志インタビュー「目に見えない資本」

田坂広志さんは、多摩大学大学院教授で、シンクタンク・ソフィアバンクの代表も務める多彩な方です。世界経済フォーラム「ダボス会議」でグローバル・アジェンダ・カウンシルのメンバーも務めています。

著書は既に60冊を越えており、ビジネス本を読むのが好きな方は一度は彼の本を手にとったことがあるのではないでしょうか。

そんな田坂さんが今回のインタビューの中で語っていたのは、「貨幣経済」に変わる「目には見えない資本」について。

資本主義を従来型の「貨幣経済」の枠組みの中だけで語ることが果たして妥当なのか、企業や社会、国の豊かさを「貨幣」という尺度だけではかることにはもはや限界がある。それに打って変わるのが「目に見えない資本」だと田坂さんは主張します。

目に見えない資本とは何か?

この「目に見えない資本」というのは5つ存在するようです。

具体的には、「知識資本」「関係資本」「信頼資本」「評判資本」「文化資本」の5つ。

これだけでは、いまいちピンとこないと思うので、以下で具体的に説明していきましょう。

知識資本

これは、言わずもがな、人間の頭のなかにある「知識」や「智恵」そのものです。学術や芸術という分野も、ここに含まれてくるでしょう。

日々のインプットから得られる資本全体を指すものだと思います。

参照:僕が毎日ブログを書く3つの理由 | 隠居系男子

関係資本

知識資本を流通させるために必要なのが、「関係資本」です。

知りたいことがあるときに、人に頼めばすぐに教えてくれる人が周りに何人もいる、これが「関係資本」が豊富であるという状態です。

ただし、これは「人脈データベース」とは違うと、田坂さんは強調します。

プロフェッショナルの世界では、互いの知識や智恵というのは「等価交換」されるもの。相手から有用な知識や智恵を得ることができたら、同様に有用な知識や智恵によって報いる必要があると。

したがって、自分自身も豊かな「知識資本」を持つ必要があり、その結果生まれた関係性がこの「関係資本」であって、日本古来から言われているような「有り難い御縁」などという表現はこれに近い発想なのだと。

最近、このブログでも強調していますが、「成果物」を互いに持ち寄ることが正にこの「関係資本」の関係に当てはまると思います。

参照:面白いことをしたい人に必要なのは「成果物」と「相手に歩み寄る柔軟性」 | 隠居系男子

信頼資本

関係資本を築くために必要になってくるのが「信頼資本」です。

互いの信頼がなければ、関係は成立せず、知識や智恵の交換も生まれてきません。

評判資本

そしてさらに、その信頼をもたらすのが「評判資本」です。

その人が社会からどのような評価を与えられているのか、どのような評判を得ているのか。本当に信頼するに足りる相手であるかどうかを判断するための材料となるものです。

以下の記事でスタジオジブリの宮﨑駿さんや高畑勲さんが集めている「信頼」なんかは、正にこの評判資本が潤沢なのだということなのでしょう。

参照:若いうちに貯めておくのは「共感」であって「お金」ではない。 | 隠居系男子

文化資本

さて、上記の4つ、知識・関係・信頼・評判が大切な価値であると感じられるようになったということは、それが文化になった証であるとも言えます。そこで生まれるのが、「文化資本」です。

「知識や智恵を互いに与え合い、助けあうことを大切にする文化」それこそがまさにが文化資本となって、そのコミュニティや企業の中で育まれていくものになっていくのだと。

このブログでよく取り上げる、“らしさ”というのもまさに、文化資本そのものなのかもしれません。

参照:
これからの時代は“雑誌的な働き方”が主流になる。 | 隠居系男子

無意識の同調意識はどこから生まれてくるのか。 | 隠居系男子

5つを貫く「共感資本」

そして最後に、もう1つ大切な資本があると田坂さんは言っていました。

それが、5つの資本を貫く「共感資本」というもの。

文化、評判、信頼、関係、知識。そのいずれもの根底に流れている人間同士の共感。

その共感がなければ、目に見えない5つの資本も成立せず、流通していきません。だからこそ、これら全ての要素において、その根底に「共感」というものがなければいけないのだと田坂さんは主張します。

最後に

ここまで読んできて下さった方、読んでみていかがだったでしょうか。

きっと、いずれの「目に見えない資本」も当たり前のように感じてしまい、人によっては「何を今更…」と思っている方もいるかもしれません。

でも、それが正しいんです。「新たな、しかし、懐かしい価値。」と本インタビューでも語られているように、これらが昔から日本人が大切にしてきた価値観そのものなんです。

ここ何十年かの間で、これらの価値が急激に失われつつあったのが、今またこの流れに回帰しようとしているんだと思います。

最近、僕がこのブログや「MATCHA」、その他諸々の活動の中で繋がっていく方々は、正に皆さんこの資本を潤沢に持っている方々ばかりです。

そして、そんな方たちと関わらせてもらううちに、自分もこの資本が徐々に溜まってきているような感じがしています。

正直お金はあまり稼げていませんが、今この目に見えない資本を急激に“稼がせてもらっている”ような気がします。

この資本は「お金」とは違い有限ではないため、決して奪い合うものではありません。繋がれば繋がるほど、互いに蓄積されていくものです。

今後、更にこういった価値観や世界観というのは加速していくのは間違いないでしょう。

漠然とこのような変化を実感していた人に、今日ご紹介した5つの資本が具体的な指標として参考になれば幸いです。

さて明日は「インターネット革命と目に見えない資本の関係について」田坂さんの言葉を引用しながら更に書いていきたいと思います。

それでは今日はこのへんで!

ではではー!

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