どうも鳥井(@hirofumi21)です。
今回も、蔵前にある革小物ブランド「Alt81」高崎真行さんのインタビュー記事の続きです。いよいよ話題も核心に迫ってきました。
前回までの記事はこちら。
【第1回】蔵前に店を構える革小物ブランド「Alt81」は、なぜウェブコンテンツに力をいれているのか? | 隠居系男子
【第2回】革小物ブランド「Alt81」がウェブコンテンツに力を入れるようになったきっかけとは? | 隠居系男子
【第3回】なぜ蔵前という街を選んだのか?「Alt81」が蔵前に溶け込むまで。 | 隠居系男子
ものづくりだけで生活していけない職人がいる。
ーー これまでのお話を聞いてきて、ブランドとして、お店として、とても順風満帆なように思いますが、そんな中でも何か不安なことや、悩みみたいなものってあったりするんですか?
高崎 そうですねえ・・・。正直に言ってしまってもいいですか?
ーー はい、ぜひ。
高崎 今、ものづくりだけで生活していけない職人さんが結構いらっしゃいます。生活のためにものづくりを辞めざるを得ない状況の人もいます。あと、僕が一番ショックだったのが、子供に仕事を継がせられない。子供は継ぎたいって言ってるのに。収入が安定しないから、仕事の先行きが見えないから継いでほしくないみたいな話があって。それはちょっと悲しいなと。
だから微力ながら、少しでも仕事を増やして、ものづくりで生活していけるようにしたいとおもって会社を立ち上げたんですが、僕らが今職人さんに依頼している商品ってあまり使わないような革を使って、手間のかかる作りをしているので、作るのに技術が必要で。
そういう商品を作ることのできる職人が沢山いてほしいけれど、すぐに職人さんが成長するわけじゃないので、やっぱり後世の育成が絶対に重要なんですけども。
ーー はい。
高崎 でも今はAlt81としてそれができていなくて…。
ーー あーなるほど。
高崎 結局、自分達がやろうとしてる商品はベテランさんしか作れない。このままいくと、ベテランさんはどんどん減っていく…。ベテランさんが弟子を取れればいいんですけど、そこまでにどれだけの時間かかるのかとか、結局そのベテランさんも、もう若干諦めてらっしゃることが多いんです。
なんかこう、自分が目指してることに、自分で首を絞めてしまっているんじゃないかと。本来であれば作りやすいものを大量に発注するのが、職人さんからすると欲しい仕事だったりもするんですけど。それを依頼していないっていうのがやっぱり葛藤というか。自分の中では早くなんとかしないといけないなと思っています。
半年以上も順番待ちが続いてしまう状態。
高崎 あと、売り切ってしまうと次ができるまでの日数が予想できないんです。というのもうまい職人さんには仕事が集中しやすくて、作ってもらうのが順番待ちになるんですよ。そうなると、その分時間が空いてしまって、中にはもう半年以上もお待たせしてしまう商品もあるんですよ。
ーー えー、半年も!
高崎 1月や2月にお客様から「これ欲しいので、できたら連絡ください」とご要望をいただいて、「できました!」と半年後にご連絡しても「何のことだっけ?」みたいな。
「半年ぐらい前に入荷連絡のご要望を承りました」といっても、「あっ、もう買っちゃいました…。」となってしまうんです。
ーー そりゃ、そうですよねえ…。
高崎 そこはもう、葛藤というか、なんとかしないとなとは思っているんですが、難しいところなんです。
ーー 今後は、もうちょっと安価なものも作っていきたいっていうことを別のインタビューの中でおっしゃっていましたよね。
高崎 そうですね。
ーー その考えというのは、今お話したような感じで、新人さんにもお願いできるような仕事を作りたいということですか?
高崎 今やってる「Alt81」だと、ちょっとコンセプトがズレてしまう可能性もあるので、それとはまた別の形で何かできないかなと考えています。
ーー やっぱりそれは、職人さん育成のためっていうことですか?
高崎 そうですね。育成というか、今大切なのは結構「今」だったりするんです。今職人になりたいっていう若手がいるなかで、ちょっとでも何かサポートできないかなっていう直近の課題としていつも考えているんです。
職人が育たないのはバブルが原因?
ーー これは単純に個人的な興味なんですが、なぜ技術が継承されずに断絶してしまったんですか。
高崎 僕はバブルが原因だと思ってます。バブルの時期って80年代から、まあ90年代初頭にかけて、前後を含めると15年くらいあるんですけど。結局、職人になる選択肢をする人には2タイプいて、ひとつは、ものづくりが好きな人。そしてもうひとつは、あくまで仕事としてやっている人。
ーー あー、なるほど。
高崎 前者にはバブルはあまり関係ないんです。後者は極端な話、別にものづくりが大好きというわけじゃないけど、生活していくために作るという人です。
僕は両方とも大切なことだと思っていて。別に作ることが好きな人じゃないと作っちゃ駄目なんていうのは、これはちょっと違うような気もしているので、生活のために作ることは全然ありだと僕は思っています。むしろそういう人が生産効率を高めるために色々と試行錯誤をしたりして。
ーー そういう人たちって、ものづくりに“執着”がないんですよね。
高崎 昔は結局、生活のために職人になる人が多かったんですけど、その時期も、やっぱりそれほどたくさん稼げるわけじゃないんです。ただ、自分の腕一本で生活していけるっていう理由で選ばれる方が多かったと思うんです。
でも、バブルに入ってからは高い給与が貰えて、安定した働き方のサラリーマンが一気に広まって。怪我の心配もなく、将来も安定している。身体一つ、腕一本で少しでも失敗したら、収入にすぐに影響がでる職人を選ぶ人は、結局減ってしまう。そのバブルの間の前後15年くらいがポッと職人になる人がいなくなってしまっていて…。
でもバブルが終わってから、またものづくりをしたい若手や仕事にしたいって思う人が現れても、既に15年くらいの間があいちゃってるので、なかなかこう技術が継承されないというか。
ーー 現状ってやっぱり、若手で作りたいっていう人達は増えてきてるんですか。
高崎 たぶん少しずつ増えてきてます。この間そういう若手の職人の集まりに行ったら、そこに来た人たちだけでも10人以上いて、みんなそれぞれの会社の中で作り手としてやっていました。ですが、やはり生活はそんなに楽ではないって言っていました。そこでこう、何かしらできればという想いがふつふつと…。
ーー そうですよねえ。
高崎 月に数万でも仕事が出せると、すごく助かるみたいな。
ーー ふんふんふん。
高崎 「仕事が終わったあとにお小遣い稼ぎの感覚でどう?」って聞いたら「いいっすね!」って。そんな話をこの前してきたんですけども。そうしないと生活できなくなって辞めざるを得ない状況もでてきたりするんですよね。結構、目の前のそういう課題をなんとか解決したいなっていう思いは強いです。
★★★
次回に続きます。
それでは今日はこの辺で!
ではではー!
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(写真撮影:タクロコマ 一部画像提供:Alt81)