Cut9月号『風立ちぬ』宮崎駿3万字徹底インタビューにみる渋谷陽一のあざとさ。

Cut (カット) 2013年 09月号 [雑誌]

“目に見える現実が彼の映画の描くファンタジーに追いつき、追い抜いた”、どうも鳥井です。

上の一文は、Cut9月号『風立ちぬ』三万字徹底インタビュー(ココリンク)の渋谷陽一さんの文章の一節です。

1ヶ月以上前からずっと待ち続けていたCutのジブリ特集がやっと発売されました。いやー、本当に長かった!!待ったよー、待ちに待ったんだよー!

実際にインタビューの内容を読む前までは、インタビューの中の宮崎駿さんの言葉の中から気になったものをピックアップして、自分なりに読んだ感想をブログにまとめようと思っていたんです…

…がしかし!いざ読み終えてみるとそんな打算は一気に吹っ飛びました。

そう、題名にもあるように、渋谷陽一さんのインタビューのうまさというか、その“あざとさ”に只々感動させられてしまったからです。

もちろん、宮崎駿さんの発言も素晴らしくて、大変感心してしまうものから、「えぇ!?そんなこと言っていいの!?」って思ってしまうようなものまで、幅広く答えられています。(そりゃ3万字もありますからね笑)

しかし、渋谷さんの切り返しが絶妙すぎる!
「そう!そこが聞いてみたい!」という質問を、宮崎さんがキレるかキレないかの瀬戸際でギリギリをせめて引き出している。さすがです、渋谷さん…。

株式会社ロッキング・オンの代表取締役社長 渋谷陽一さん

ここで「渋谷陽一って誰なんよ!?」って人のために、軽くご紹介しておきます。

渋谷 陽一(しぶや よういち、1951年6月9日 – )は音楽評論家、編集者。
株式会社ロッキング・オンの代表取締役社長。2011年現在ロッキング・オン社は『ロッキング・オン』以外にも『Cut』などサブカルチャー全般を対象とした雑誌を発行している。新雑誌の立ち上げに際しては編集長として積極的に関わることが多く、その手腕も高く評価されている。「映画」ジャンルにはとくに積極的に関わっており、北野武・宮崎駿らに直接インタビューをおこなっている。
本人は評論家業よりも出版社の経営者としての立場を重視しており、経営者の方が面白いとも公言している。

引用元:渋谷陽一 – Wikipedia

そう、カットの出版社であるロッキング・オンの社長さんです。

そして、Cutで宮崎駿さん、鈴木敏夫さんにインタビュー特集が組まれる際は、ほぼすべてこの渋谷陽一さんが担当されています。

『鈴木敏夫のジブリ汗まみれ』にも何回かゲストで出演されていて、鈴木さん曰く、宮崎さんはインタビュー嫌いですぐに不機嫌になってしまう頑固者だけれど「渋谷さんのインタビューだけは素直に話してしまう」と言わせてしまうすごい方です。

そんな渋谷さんは、ジブリファンにはとても有名(?)な方!

僕が何度も「Cutのジブリ特集を楽しみにしている!」と、このブログで宣言してきたのも、この渋谷さんが担当しているからでした。

今日は、宮崎駿さんのインタビューの内容はあえて一切紹介せず、渋谷さんの質問と切り返し“だけ”を幾つかピックアップして紹介したいと思います!

目に見える現実が彼の映画の描くファンタジーにおいつき追い抜いた。

これは雑誌冒頭のインタビュー導入部分に書かれた一節なのですが、今回一番皆さんが気になっているところだと思います。

今まで、「少女」を主人公にして「ファンタジー」を描いてきた宮崎駿が、ここにきてなぜ「大人の男」を主人公にして「戦争」を描いたのか。

確かに、今まで様々な媒体でで宮崎さんはこの質問に答えてきました。

しかし、どれも表面的な受け答えに過ぎなかった印象はあったと思います。

今回のCutの中では、しっかりと「時代の変化」と向き合う宮崎さんの本音が語られていました。

だから、あの映画の、最初の3分の1くらいまでの淡々とした流れは「お、すげぇな宮崎さん!覚悟の演出!」と僕は思ったんです。

これを、宮崎駿を目の前にしてハッキリ言えてしまうのが、渋谷陽一さんなんです!笑

テキストで読んでいるだけなので、これをどうゆうニュアンスで言ったのかまではわかりません。もちろん、話の文脈的にかなり好意的に評価しているように読み取れます。

ただ、もちろんもう一つ違った意味にも取れるでしょう。宮崎さんの反応もまた「へぇー、そうなんだ。」って思わされる答え方。ここはぜひ本書でお確かめください。

宮崎さん、この映画を見て泣かれましたよね。僕は、ドイツにいった場面で泣かれたんじゃないかなと。

多くの人は、恋人が死ぬところで泣くことを想像すると思うんですけど、宮崎さんは違うところで泣くわけですよ。僕はあのドイツの場面というのは絶対そうだと思うんですけれども。ここからは否定されること承知で勝手にしゃべりますが、なぜドイツの場面で泣くかというと、ソレは自分のことだからですよね。

この映画の画期的なところは、初めて宮崎駿が自分を主人公にしたところなんですよ。物凄くリアルに。

堀辰雄だけでもダメ、堀越じろうだけでもダメ。表現者であり生産者である宮崎駿を主人公に設定しないと…。


…はい、この詰め寄り方なんです。

確かに、映画が終わったあと様々なブログで似たような考察はなされました。でも、誰ひとりとして、“ブログ上のひとりごと”の域を抜けていなかった。しかし、渋谷陽一さんはこの考察を宮崎駿ご本人に投げかけてしまうんです!

この後も怒涛の質問攻めが続き、その勢いは宮崎さんが、「結論が出たようですから、今日はそろそろこれで・・・」って終わろうとしてしまうほど。

これ、対談じゃないですからね、インタビューです。笑
もはや、「宮崎駿✕渋谷陽一 3万文字徹底対談!!」とかのほうがしっくり来る勢いです。笑

Cutを手に入れる際はお早めに!

これ以降の具体的な質問と、宮崎さんの回答も書きたいところですが、だいぶ長くなってきましたし、まだ雑誌が発売されたばかりで読んでいない人も多いと思うので、今回はこの辺でやめておきます。

気になる人は是非手にとって読んでみてください!

僕は、ジブリ作品において、Cutの渋谷陽一さんのインタビューを読み終えたところで、初めて完結すると思っています。

もし『風立ちぬ』を既に映画館で見たのならば、この3万字徹底インタビューは絶対に読むべきです!

それくらい宮崎駿を丸裸にして、彼がこの映画通じて本当に伝えたかったことを引き出してくれていると思います。

Cutは電子版が販売されておらず、売り切れてしまう号は一瞬でなくなってしまうので、気になる人はなるべくお早めに!(先月号のあまちゃん特集は既にプレミアついています笑)

あ、ちなみに鈴木敏夫さんが最近新刊を出されて、その本の聞き手も渋谷陽一さんが担当されています。

まだ読めていませんが、こちらも近々書評を書くつもりなので、お楽しみに!

それでは今日はこのへんで!

ではではー。

鳥井弘文

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