どうも鳥井(@hirofumi21)です。
前回の記事「switchジブリ特集 西村義明✕川上量生対談「狂気の沙汰ですけど、『かぐや姫の物語』で姫の疾走するシーン、あれは全て水彩画。」 | 隠居系男子」に引き続き、switchジブリ特集の第2弾です。
今日は糸井重里さんと川上量生さんの対談「プロデューサー鈴木敏夫のアート性とは?」を取り上げます。
この対談も非常に興味深く、色々と示唆に富んでいるのですが、今回はこのお二人のお話の中から、「弟子入り・徒弟制度」の部分だけを取り上げて、少し考えてみたいと思います。
お二人の対談を読んでみて、僕が思ったこと、それは「21世紀新しい働き方が生まれ、個人が主役となっていく時代。そんな中、徒弟制度もまた見つめ直され、新しいカタチが生まれてくるのではないか」ということ。
キーワードは「“自分の居場所”を維持しながら…」です。
スタジオジブリプロデューサー見習い・川上量生
あれは遡ること3年前、突然『鈴木敏夫のジブリ汗まみれ』に川上量生さんが登場して、驚くほど面白いネットの話をしたかと思えば、その放送後、突然「スタジオジブリプロデューサー見習いになります!」という発表が…。
参照:ニコニコ動画を運営するドワンゴ会長・川上量生著『ルールを変える思考法』が完全に星5つだった! | 隠居系男子
それを聞いた時の僕は、「何を言っているんだ!?この人は!」と。
「ニコニコ動画という世界で類まれなサービスを運営している、超がつくほど有名な企業の創業者なのに、更に鈴木さんの弟子入りだと!?ふざけんなっ!」と。
「こっちがどれだけ鈴木敏夫さんの事を好きかわかってんのか!それを突然やってきて、どっちも取りに行くとはなにごとじゃい!!」って学生ながらにキレそうになってたわけです…。笑
21世紀の新しい弟子入りのカタチとは。
ただ、今回の糸井重里さんと川上量生さんの対談を読んで、僕はその考えを改めました。
そして、「程度の差はあれど、もしかしたらこの弟子入りのカタチが、今後増えていくんじゃないの!?」って思ったわけです。
“自分の居場所”を維持しながらの弟子入り。
それがどんなカタチの弟子入りかというと、「自分の居場所・稼ぎ口・専門性」を保ったままの弟子入りです。
お二人の対談から少し引用してみます。
糸井:僕は川上さんが自分の仕事場所を持っていながら、鈴木さんのカバン持ちをやるという話が聞こえてきた時に、昔だったら僕がやりたいタイプの仕事だったと思ったんです。
つまり、自分とぜんぜん違う人から全てを受けてみたいというか。今持っているものはそのままにしておいて、誰かの弟子をやってみたいというのは、結構よく考えることなんですよ。
中略
川上:ジブリの人たちに受け入れてもらうためにはどうしたらいいんだろうと。それは本当にわからなかったんですけど。(笑)
だって、普通に考えたら怪しい人ですよね。鈴木さんに弟子入りしたいと言って来て、ずっと鈴木さんにくっついているわけですからね。その段階で、すでに印象が悪いんですよ。(笑)
糸井:そこはたぶん、稼ぎどころが別にあったのが楽だったと思うんですよ。
川上:そうですね。厳密な意味ではジブリに居場所を作る必要はなかったから。
糸井:そうだよね。悪くしても道楽に見えるっていうところで、「あいつはジブリの財産を狙っているな」とは思われないわけで。そこは非常に大事ですよね。他で食いっぱぐれちゃったので弟子にしてくださいって言って来たら、何を言ってるんだと思われるだろうけど。
結果として、どちらにもプラスになる。
川上さんは上記のような理由から「絶対にドワンゴの利益になるようなことはやらないでおこう」と決めたらしいです。
しかし、糸井さんも本対談でおっしゃっていますが、「たとえそうやって意識したとしても、ジブリにいれば何も得ないはずがないので、必ずプラスになる」と。それは金銭面うんぬんという話だけではなく、もっと深い次元で。
逆に、弟子と言いつつネット界隈に見識のある川上さんだからこそ、鈴木さん、いやスタジオジブリに還元できることも多々あるわけです。
これこそまさに、全く別の専門性を持った人間同士の徒弟制度だからこそ生まれるメリットだと思います。
「自分の居場所=ネット」という相性の良さ。
僕はこういった弟子入りのカタチが今後ドンドン増えてくると思います。そして、その時の弟子の居場所となりうるのが“ネット”であると。
いや、ネットと広く書きましたが、別に川上さんのように会社起こしてウェブサービスを立ち上げて…って言う話じゃなくても、ブログやネットメディアの運営でも十分だと思います。
大切なのは、場所や時間にとらわれることなく、ネットさえ繋がっていれば“自分の居場所”を整備・管理することができて、自分の食い扶持もある程度稼ぐことができればOK。
さらにネットであれば、弟子入り先で学んだことを瞬時にアウトプットすることも可能となるわけだから、“自分の居場所”にやってくる人々へ、そこで得た学びをすぐに還元することもできます。
まさに、昨日書いた記事「ちきりんの成功要因は「まだ全然本気出してないけど…?」」で、ちきりんさんの考える「自身のメディア」に近い考え方かなと。
師匠がネットに精通していない人であれば、なおよし。
そして、弟子入り先がネットと無縁のところであれば尚更良いのではないでしょうか。
農家でも庭師でも鍛冶職人でもお坊さんでも、何でも良いと思います。
芸能関係も、華々しい世界でありつつ、ネットには疎い人が多いと聞くので、そういった業界もアリかもしれません。
ネットに無縁だった世界であれば、自身にネットメディアを運営できる程度の知識があれば、十分弟子入り先に“新しい風”を吹かせる事は可能です。
決して突出した技術がなくても大丈夫。スマホを使いこなせるというだけでも、十分価値のある技能だといえるでしょう。
従来の弟子入りは、結局上司と部下の関係。
ここまで読んできた方の中には、「だったら別に“自分の居場所”が確立されていなくてもいいんじゃない?」って思う方もいるかもしれません。
「その知識さえ得てしまって、従来のように、その人の企業なり事務所なりに入っていって弟子入りすればいいじゃないか」と。
でもそれではダメなんです。糸井さんの「財産を狙ってると思われる」という指摘もそうですが、それ以上に、結局上司と部下の関係になっちゃうんですよね。
中国のベンチャー企業で自分が働いた経験
僕も昨年まで中国のベンチャー企業で働いていました。日本にいた時からこの人のもとで働きたい願いながら、渡中し「ここで働かせてください!」と門を叩いたので、実際のところは弟子入りみたいなもんでした。
そして、まさにカバン持ちのようなことをやったわけです。営業や講演、会食なども沢山連れて行ってもらいました。あ、あと以前書いたように、反日デモの現場も。
参照:反日デモ最大級のあの日、僕は北京日本大使館の前にいた。 | 隠居系男子
もちろん、その経験から多くの学びを得ることもできました。しかし、やっぱりそれは上司と部下の関係なんですよね。上手く言えないんですが。
自分のほうが詳しい分野でも、自分の居場所がないので、結局全てが受け身となってしまう。
また、第三者にお会いした時も、社員であれば「あー部下ね」となってしまって、それ以降社長としか話をしなくなってしまう人も沢山います。
でもそれが新しいカタチの弟子入りであれば、全然違うと思うんです。
最後に
以上が、糸井重里さんと川上量生さんの対談から考えた21世紀の新しい徒弟制度のカタチです。
このような徒弟制度が増えてきて、師匠と弟子をマッチングさせるようなサービスが出てきても面白いかもしれません。
定年まで働く就職ではなく、弟子入りなので、興味や関心、直感といった自分の内から溢れ出てくる感情で選んでみてもいいと思うんです。
そこで得られた知識や経験が、実際に自分の分野で活かせるかどうかは抜きにして、日本人としての「生き方」を学ばせて頂くんだという心意気で。
これが日本の原風景、歴史、伝統などを守る為の1つのの打開策に繋がってくれそうな気もしています。
参照:真のグローバル化とは、徹底的に日本の原風景を理解すること。 | 隠居系男子
このブログも“自分の居場所”として、いま良い感じに伸びてきているので、もう少し頑張ってちゃんと確立できるようになったら、興味のある人のもとへ弟子入りしてみたいなと真剣に考えています。
ぜひみなさんもこの新しい徒弟制度のカタチについて、自分なりに考えてみてください!
それでは今日はこのへんで!
ではではー!
鳥井弘文
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