「サブスクリプションと人」の関係性。

SWITCH Vol.31 No.12 ◆ スタジオジブリという物語 ◆ 責任編集:川上量生

どうも鳥井(@hirofumi21)です。

今回は前回に引き続き、switchジブリ特集第三弾!

東宝の映画プロデユーサーである川村元気さんと川上量生さんの対談「ジブリの未来はどうなるのか?」を取り上げてみようと思います。

ちなみに前回までの記事は以下。

switchジブリ特集 西村義明✕川上量生対談「狂気の沙汰ですけど、『かぐや姫の物語』で姫の疾走するシーン、あれは全て水彩画。」 | 隠居系男子

糸井重里✕川上量生の対談から考える「21世紀の新しい徒弟制度」のカタチ | 隠居系男子

この対談も例のごとく色々な話題が繰り広げられており、皆さんが気になる『ナウシカ2』の可能性についても語られていますが、残念ながらそれはここでは取り上げません。

今回は二人の話をもとに「人とサブスクリプション(定額制購読)の関係性」について少し考えてみたいと思います。

キーワードは「相手が人だからこそ…」です!

世の中の人はもっと、ジブリの人間ドラマをみるべきだ。

川上さんが本対談の中でおっしゃっていて、個人的にも大賛成だったのが、「世の中の人はもっと、スタジオジブリの人間ドラマをみるべきだ!」というお話。

川上さんご自身も、ジブリに入る前までは『ナウシカ2』を絶対に観たいと思っていたそうですが、ジブリに入ってみて間近に見るようになってからは考えが変わったそうです。

「高畑勲、宮崎駿、鈴木敏夫、それに庵野秀明が加わった人間ドラマを、世の中の人はもっと見るべきだ」と。

僕もこれだけジブリに関して様々な記事を書いてきていますが、正直ジブリのアニメ作品はそんなに観てきていません。どの作品も観た回数は2桁にとどかないぐらいでしょう。

ジブリファンとしては失格です。しかし、僕もこのジブリ内で起こっている人間ドラマのほうが好きなんです。「アニメ作品は人間ドラマを面白くするための一つの要素に過ぎない」ぐらいに思っているフシさえあります。

定額制のサブスクリプションがスタジオジブリの生きる道。

さて、前回の記事でもちょろっと書きましたが、川上さんがジブリに対して貢献できることはネットを活用した新しい試みです。

参照:糸井重里✕川上量生の対談から考える「21世紀の新しい徒弟制度」のカタチ | 隠居系男子

そして、いま彼がやろうとしていることは、「コンテンツの制作側であるアニメスタジオが、サブスクリプションサービスを開始させて、そのプラットフォームを作る」ということらしいです。

ネットがこれだけ発達してしまった今日において、コンテンツのバラ売りというものには、やはりもう無理があると。それは音楽業界や電子書籍まわりをみても明らかです。

だからこそ、コンテンツを制作する側が、自分たちでコンテンツを配信するプラットフォームを創りだして、そこで”ファンクラブ”よりも更に強固なサブスクリプションを行うべきなんだと川上さんは考えているわけです。

川上さんはその内容には言及していませんが、具体的には、映画館に観に行った時だけお金を払うのではなく、毎月一定額、1000円なら1000円を払い続け、その代わりに制作舞台裏であったり、先行試写会に参加できるようにしていく、ということだと思います。

これがスタジオジブリぐらいのクラスであれば可能であると。そしてジブリが成功すれば、その後に色々と続くところが出てきて、更なる可能性が広がるっていくはずだと。それが川上さんがジブリに入って実現させたいことのようです。

作っている人が好きだから、サブスクリプションに登録したくなる!

上記で取り上げた2つの話題は、別々の文脈で語られており、対談自体も「サブスクリプションの初めての成功例を作りたい!」というところで終わっているのですが、僕はこれには更に続きがあるような気がしています。

なぜ人はサブスクリプションに登録したくなるかといえば、「コンテンツを制作している人間に対して興味があるから。」だからこそ、人はそれを応援したくなってわざわざサブスクリプションに登録するんじゃないか、と僕は思うのです。

成功している有料メルマガと、衰退の一途をたどる新聞

今、一番分かりやすく成功しているサブスクリプションのモデルといえば、やはり有料メルマガでしょう。このことに関しては以前自分も記事を書いたことがあります。

参照:田端信太郎著『MEDIA MAKERS』を読んで考えてみた。有料メルマガの次なる一手。 | 隠居系男子

なぜ有料メルマガに登録するかといえば、その人の話が面白いと感じ、人間味のある話がそこに含まれているからですよね。決してコンテンツ主体ではないと思います。

佐々木俊尚さんや堀江貴文さんの語る話が、毎回自分の中でヒットする確率が高いから、有料メルマガにも登録して配信されるたびに読もうとするわけです。

一方、いま急激に購読者数を減らしているサブスクリプションサービスの代表例といえば、新聞でしょう。

作っている側が見えなくなってしまって、記号化されてしまった情報だけが毎日整理されて届いたとしても、それをもう積極的に読もうとは思えないわけです。

今やニュースだけであれば、ネットでいくらでも手に入ってしまいますし、速報性もネットのほうが格段に早い時代です。

つまり、今起こっている変化というのは、「作っている人間が透けてみえて初めて、そこに興味や関心が生まれ、常に追い続けていたい衝動に駆られる」という方向へシフトしているわけです。

最後に

この考えからすると、個人ではなくスタジオ単位でサブスクリプションをやる場合であれば、そこで繰り広げられる”人間ドラマ”が一番重要な要素となってくるはず。

「コンテンツの平均的な完成度の高さ」と、「作っている人々の織りなす人間ドラマ」この2つがセットになって初めて、スタジオ単位でのサブスクリプションは成功するんだと思います。

コンテンツがメインで、それが主体のサブスクリプションでは間違いなくうまくいかないと。だからこそ、川上さんは「ジブリならいける!」と思って、最初の成功例にしようと考えたのでしょう。

高度に情報化された現代、作り手が全く見えないモノばかりが溢れている世の中です。しかし、ここにきてまた、人が人を応援するという正しい姿に戻っていくのではないでしょうか、僕はそう思います。

それでは今日はこのへんで!

ではではー!

鳥井弘文(@hirofumi21

その他この投稿に関連した記事はこちら!

『かぐや姫の物語』は完璧で美しく、虚しくて残酷な映画。 | 隠居系男子

なぜクラウドファンディングはアフィリエイトを導入しないのか? | 隠居系男子

『夢と狂気の王国』はジブリを題材にしたドキュメンタリー作品史上最高傑作だった。 | 隠居系男子

シェアしてくれるとめちゃくちゃ嬉しいです!

スポンサードリンク