モバイルがアジアを世界の中心にする。

ぼくらはアジアが世界の中心になると信じてます。
でもそれがいつになるかはまだわかりません。50年先か、30年先か、10年先か。ただ、間違いなくそれほど遠くない未来にアジアが世界の中心になると信じて疑いません。

なぜ僕らがそう信じてやまないのか。
アジアが世界の中心になる上で、一番のキーワードになるであろう「モバイル」について、今日は書いてみたいと思います。

今、日本を除くアジアではモバイル(スマホ)が急速に普及し始めています。
今僕がいる北京でもそれは例外ではありません。
日本でも急速に普及しているよ!と思うかも知れませんが、日本のソレとはわけが違います。

日本人の場合は、iモードやiアプリのようなものが使えるガラケーからの乗り換え組ばかりですが、他のアジアの国々では通話とSMSが使えただけの1000円や2000円で買えるようなケータイからの乗り換えです。

今までそんなケータイを使っていた彼らが、スマホの普及により一気にネットにつながろうとしています。これはとても重要な変化です。

先ほど僕は普及「し始めて」いると書きました。
初代のiPhoneが発売されてから既に6年、日本にいたらもうスマホというものが当たり前のように感じているかも知れませんが、他のアジア諸国ではまさにこれからというところです。

そもそも北京では、まだまともに3Gすら普及していません。2Gでネットしている人もたくさんいます。

ここ北京でもこれから更に一気に普及してくんだろうなという印象です。日本で言うとiPhone4が発売された頃ぐらいのスマホ普及イメージを想像してもらえればいいです。中国でも今までは一部の富裕層の人々とガジェットオタクの人々が買えている程度でした。

ココ中国での大学の初任給は月給3000元程度(4万円弱)ですので、彼らにとって5000元程度のiPhoneはまず買うことができません。

今彼らが買えるスマホは1000元強程度(15,000円程度)
彼らが投資できる価格はこのへんがリアルな額なのです。(月収24万円でいえば8万円ぐらいの価値)これはやっとまともに使えるようになった低スペックのスマホです。

現に僕が今勤めているベンチャー企業では、インターネット関連の会社であるにもかかわらず、3人の中国人は未だにスマホを使っていません。彼女たちは興味がないわけではないんです。暇になれば「どこのスマホがイイ、どこのスマホが安い」という話をひっきりなしにしています。しかし、生活費を考えると未だに買えずにいるのです。(ちなみにココに出てくるブランドは日本にいたら絶対に聞かないような名前のブランドばかりです。)

まだスマホに乗り換えられていないこういった人々は、中国にはまだまだ沢山います。あくまで主観ですが、僕はこの層が一番多いと思います。

中国に視察という名の旅行に来て、中国を語る人々はいわゆるお金持ちの人々が集まるような街だけに繰り出し(北京なら王府井や三里屯、西単)そこの若者たちだけを見て判断しています。

現地の若者と交流したと言い張る人たちも、英語を流暢に話す育ちの良い若者たちと交流するのみ。もちろん、彼らは皆既にiPhoneなどを持っています。

しかし、その層は言うまでもなくもちろん少数派です。

圧倒的多数を占めるのは、自分の給料ではまだまだ購入することができない子達なんです。

先ほど「やっと使えるようになった低スペックのスマホ」と書きましたが、それでもまだiPhoneの3GSや初代Galaxyにも及ばない程度の低スペックです。

こんな状況下の中で、今中国で流行っている機能があります。
それが「QRコード」

日本人からすると、「なぜ今更QRコード?もうオワコンじゃんw」と思うかも知れませんが、少なくとも中国では今これが色々なサービスに実装されてきています。

中国版Twitter&Facebookの「微博(ウェイボー)」や、中国版LINEの「微信(ウェイシン)」にも続々と対応し始めています。

なぜ今QRコードなのか。
それは、QRコードはそれほどスペックの高くないスマホでも難なく使えるんです。そして、ガラケー時代から慣れて来ている日本人と違って、QRコードでも中国には十分新鮮味があるんです。なんせ、スマホを持つ以前に使っていたケータイでは満足に使うことが出来なかったんですから。

日本でFacebookのアプリが重たいというのは、結構有名な話だと思います。
最近は幾分か軽くなったようですが、それでもまだ重たいという人は多いです。

それに引き換え、中国版Twitterの微博や中国版LINEの微信のアプリの軽さには驚きます。全くストレスを感じません。(ちなみに僕はLINEでも少し重たく感じます。)

中国のインターネット企業は間違いなく低スペックのスマホに向けたサービスを作っています。なぜなら、彼らがターゲットとするメインのユーザーは、低スペックのスマホを使っているからです。

そして、彼らがこれから進出しようとしている東南アジアの人々も、まさに今誰もが低スペックのスマホを手にし始めているところです。

しかしFacebookやLINEなどは、アメリカや日本などの先進国向けの新しいサービスを提供し続けなければいけません。それはまさにiPhone5やGalaxyS3のスペックに合わせたような。でなければ、他の企業(シリコンバレーやヒカリエの中のシャレオツな企業)が高スペックスマホの機能ギリギリでハイクオリティーの小洒落たアプリを出してきて、アメリカのユーザーや日本のユーザーを奪っていってしまうからです。

つまり、モバイル端末をベースで考えると、世界を同時に取りに行く事は実際のところ不可能なんです。少なくとも今のところは。(FacebookはPCのブラウザで閲覧するサービスだったからここまで世界に普及しました。)

でも圧倒的にこれからユーザー数が増えていく場所は、発展途上のアジア諸国なのです。その人たちが皆一人一台、低スペックのスマホを持ちだして、「きっとあしたは今日より良くなる!」と信じ、現実にも給料は右肩上がりで購買欲むき出しで買い物をしまくっていきます。

対して、購買欲はなく、どんどん身の丈の生活レベルに満足していく先進国の人々。どちらに向けて企業は広告をうちたいと考えるでしょうか。どちらをターゲットにしている企業に投資家は投資したいと考えるでしょうか。これは火を見るよりも明らかだと思います。

実際に、中国では11月11日「光棍节※」という日でネット通販がものすごく盛り上がる日でした。(この日の詳細については検索してみてください)この日一日だけでタオバオは191億元売り上げたようです。日本円で約2500億円です。一日の売上です。昨年の2.5倍程度だそうです。

他のECサイトも合わせると中国全体で300億元とも言われています。約4000億円です。大事なことなのでもう一度言います。これは1日の売上です。ちなみに、楽天の年間売上高が5300億円です。

しかし、これもまだ半分以上はPCのブラウザ経由からの売上だと思います。
これがスマホから買われるようになったらどうなってしまうのでしょう。
しかも、アジア全体でそのような状況がおこったら更にどうなってしまうのでしょう。

これからアジアでは必ず流行るアプリやサービス、もしくはハードがあるともいます。
それは、人々の「インフラ」になるようなアプリやサービス・ハード。
もちろんFacebookのようなものではないはずです。
もっともっとシンプルで根源的なものだと思います。
ソレは教育レベルが高いとは言えない国、識字率が低い国でも難なくつかえるものなのかもしれません。
非言語コミュニケーションのようなものかもしれません。
そういったものがなんなのか。
僕らは自分の目で確かめたいと思っています。そして、その流れにのり、その流れを作り出す側に回りたいと強く願っています。

人間が本当に必要とするモノ。
無駄をそぎ落としてシンプルに考えた結果、行き着く先のもの。
それは先進国よりも、発展途上国から生まれてくるのかもしれないと僕らは思っています。
いや、その両方を知っている、体験したことがある者が現地の人々と共に創りだすモノなのかもしれません。

だから僕らはやはり信じて疑いません、「モバイルがアジアを世界の中心にする」ということを。

※光棍节:日本語では”独身の日”を示す。4つの1が並ぶ11月11日は彼氏or彼女がいない男女が、自分のために、友達のためにもプレゼントを買うことが流行っており、Eコマースは年々盛り上がりを見せる

鳥井弘文
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