先日、東京大学総合教育研究センター准教授・中原淳さんと元プロ陸上選手・為末大さんの対談本「仕事人生のリセットボタン ──転機のレッスン」を読みました。
この本の中にとても腑に落ちる話が書かれてあったので、このブログでも少しご紹介してみようかと思います。
東大生が家庭教師をやるのは「過去の成功体験」を資源にした「自分の時間の切り売り」。
本記事の題名にもあるとおり、ご紹介したい部分は東大生がバイトするなら、家庭教師よりもスタバのほうがいい理由についての部分です。
早速引用してみましょう。
中原 大学で仕事をしていると、よく学生から相談を受けますよ。先生、大企業かベンチャーどちらがいいんですかと聞いてきます。が、その分け方は意味がないと思うんです。事業規模とか、組織規模でものを考えるのではなくて、「伸びていく事業にかかわる」「伸びていく事業で経験から学ぶ」という視点でキャリア選択をしたほうが得だと思いますね。
為末 そうなんだ。経験こそがリソースなんですね。
中原 そうです。仕事の世界では、経験こそが貴重な資源なんです。「貴重な経験」は「次の貴重な経験」を生みだします。経験とは、いわば「資本」なのです。
(中略)
中原 「経験という貴重な資源」や「コピペできない資源」に、人は、なかなか注目しません。僕は、東大の学部生に授業で、家庭教師でバイトするのと、スタバでバイトするのどっちがいいって聞くんですよ。時給はスタバで約一〇〇〇円。家庭教師なら三〇〇〇円くらいです。短期的に考えれば、家庭教師の方が儲かりますよね。でも、僕はスタバでアルバイトしたほうがいいだろうなと思うんです。
そこでは、接客とか、多様な客層とか、そういう東大生が目にしないもの、経験しないことを経験できる。東大生が家庭教師をやるのは、「過去の成功体験」を資源にした「自分の時間の切り売り」なんです。これまで得た受験知識を教えることで、新たな能力なんて、なんにもつかない。これは過去を売っているんです。でもスタバの接客というのはこれまでやったことのない経験なんです。
「食えない仕事で食えるようになっていく」その過程が一番成長につながる。
いかがでしょうか?
僕はこのくだりを読んだ時に、めちゃくちゃ共感してしまいました。
どうしても僕らは、自分の過去の成功体験を資源にして自分の時間を切り売りしてしまいがち。
たとえば僕だったら、ブログのコンサルとか、オウンドメディア運営のアドバイザーとかそういう類いのお仕事です。
でも、そうやって「お金になりそうだから」という理由で、過去の経験を売っていたら絶対に今はない。
「食えない仕事で食えるようになっていく」その過程の中で得られる経験が一番自身の成長につながるんです。
先日書いた下記の記事も賛否両論ありましたが、言いたかったことは今回の話に近いです。
参照:「単価が安いからあの仕事は請けない」は本当か? | 隠居系男子
「話聞いてもらえるおじさん」への第一歩。
結局、単価で仕事を選んでしまうと、過去の経験を切り売りする仕事が一番単価が高くなってしまう。
人の評価(仕事の単価)は、その人の過去の結果で算定されるわけですから当然です。
でも、これを続けていくと、ヒラクさんの言う「話聞いてもらえるおじさん」になってしまう。
なお「話聞いてもらえるおじさん」とは、業界である程度地位を築いた後に立場だけで無条件に他人に話を聞いてもらえるようになった結果、過去に売れた自著に書いてある鉄板エピソードを人前でひたすらリピートするだけのインスピレーション皆無状態になったおじさんを指します。
— 小倉ヒラク (@o_hiraku) 2017年8月7日
「話聞いてもらえるおじさん」は収入も安定しているし、特定の層から話を思う存分話を聴いてもらえるので、承認欲求も満たされる。決して悪い仕事ではありません。
でも絶対に僕はそんな生き方は選びたくないなと。
たとえ安定感がなかったとしても、常に新しいことをチャレンジし続けたいと思っています。
それを忘れないためにも、今日この話をブログに書き残しておきました。
いつもこのブログを読んでくださっている方々にも、何かしらの参考になれば幸いです。
気になる方は、ぜひ本書も合わせて読んでみてください。オススメです。