『いま東京と東京論を問い直す』も新しくて面白い!

いま東京と東京論を問い直す ―首都機能から考える21世紀日本― (PLANETS SELECTION for Kindle)

東京に出てきてもう10年、どうも鳥井(@hirofumi21)です。

中学生の頃、遊ぶところも買い物するところもない地元が嫌で嫌で、東京に行きたいとずーっと考えてました。結局、高校から上京を決意したのですが、あの時の自分はまさに『あまちゃん』の春子さんやユイちゃん状態。笑

高校生の頃から、この東京という街をみてきて、その時は地元と比較し、そして最近では他の世界の都市と比較しながら、やっぱり改めて思うのは、東京はものすごく特殊な街だなーと…。

そんなことを考えている時、また雑誌『PLANETS』から対談の特集部分だけを抜き取った電子書籍『いま東京と東京論を問い直す ―首都機能から考える21世紀日本―』を発見し、読んでみたら面白かったのでご紹介したいと思います!

今回も、自分が「おっ!」っと思ったところを抜粋して書いてみようと思います。

ちなみに前回の『PLANETS』セレクションの記事はこちら
『日本的想像力と「新しい人間性」のゆくえ』が新しくて面白い! | 隠居系男子

「地理と文化」の関係の逆転現象

この電子書籍の一番のキモとなる部分がココです。

宇野 東京を考える上で、正確にはこれからの都市論を考える上で避けて通れないのが、情報化のもたらした「地理と文化」の関係の逆転現象です。

たとえば、この東京という街は若者の盛り場とともに、サブカルチャーのホットスポットが移動してきたと思うんですね。戦前から続く盛り場としての浅草・銀座があり、それが1970年代に新宿になり、1980年代の渋谷に至るわけですが、それ以降は拡散してしまっている。

どう考えても代官山や下北沢はかつての渋谷のような求心力は無いし、その残り火を温めているだけで新しい文化は何も生んでいない。

強いて言うなら秋葉原なんでしょうが、オタク系、ネット系の文化はそもそもあまり地理と結びついていないところが特徴だったりする。

『電車男』以降の秋葉原ブームは全部そうで、あれは1970年代から続く漫画・アニメ・ゲームの同人二次創作文化ーこれはほとんど特定の都市と結びついていないのですがーや、この10年インターネットで培われた文化ー「ニコニコ動画」や「初音ミク」などーが、マスメディアの影響で秋葉原を占領したに過ぎないわけです。

普段はニコニコ動画や「pixiv」でコミュニティを形成しているオタクたちが、休日のイベントとして秋葉原に足を伸ばしているに過ぎない。コミュニティ本体は主にネット上にしかなくて、秋葉原はときどき発生する祝祭の場でしかない。

この変化はまさにそう思います。

例えば、洋服であれば自分がまだ10代の頃は、渋谷や原宿で買ってこその意味がちゃんとありました。

その証拠に、モバオクやヤフオクなんかでは、どのお店で買ったものなのかを明記し、それが渋谷・原宿の雑誌に掲載されているような有名店であればあるほど、同じモノでもすぐに売れるという現象があったほどです。

しかし、最近ではECが発展してきたこと、更に若い世代が街に「リアル」を感じなくなったことよって、それも過去のモノとなっています。

今では、Amazonやzozoでカンタンに買えた方がいいし、その方がお店に行ってからのサイズ欠けの心配もしなくて済む。更に、まだ誰にも試着されていないものを、ポイント付きや割引価格で買えたほうがいい!と考える人がかなり増えてきたように感じます。

そして、過去のショッピングの満足感を満たしてくれていた場所は、街ではなく、SNSなどネットの上で「写真を共有する」というカタチに移行してきたのでしょう。

代官山から新しいカルチャーは生まれない

藤村 代官山は、朝倉不動産という強力なプレーヤーがいる街ですね。お屋敷の持ち主である朝倉さんが独自の見識を持って建築家の槇文彦さんに「ヒルサイドテラス」の設計を依頼し、1960年代から継続して開発してきた街です。

槇さんは区画の角や中央など、商業的に一番旨味がある部分をわざと抜いて、広場やホール、ギャラリーを置いて独特の風格のある町並みを育てたわけです。

もしいま代官山が復活しているとすれば、そうした既存の蓄積の並びに新しい建築がひとつできて、蔦屋書店が入居して、人が少し集まっているという程度の話じゃないですか。

(中略)

宇野 今の代官山に動きはあると思うけど、そこから新しいカルチャーが出てくる感じはしない。1980年代や1990年代の縮小再生産、つまりシミュラークルのシュミュラークルで、まったくダイナミズムは感じない、代官山蔦屋のカフェに集まる「いかにも」な格好をした業界人風の人達を見ると、申し訳ないけれどちょっと吹き出しちゃいそうになる。

だとすると濃密なコミュニティを形成して文化を生む役割は情報ネットワークに任せて、実空間はそのコミュニティを活性化させる祝祭の場として存在すればいい、という考えの方に僕は圧倒的にリアリティを感じるんですよ。

大学生の時はお隣のお隣、祐天寺に住んでいたので、代官山はよく通っていました。これまでも色々なプチブームがあの街から生まれてきたと思います。カフェやデリ、ファッションやペットなど…。

しかし、これまでもそれが主流になることはなかったし、これからも無いでしょう。提案する側も主流にしようとする気持ちはサラサラない。

たとえ、あの街から、東京の新しいメインカルチャーが生まれたと言われても、どこか頼りないですし、あまりにも層が偏りすぎている気がします。

あくまでも、代官山・中目黒は、脇役だからこその部分を目指していますし、そうゆうのが好きな人たちが集まっている雰囲気を感じますよね。

「東京スカイフォレスト」という案

「今、東京で主流の巨大商業施設(ヒカリエやスカイツリー、東京ビックサイトなど)はAKBなど何か大規模なイベントがないと埋まらなくなってきた。だから、今後10年ぐらいで廃れていってしまうのでは?」という方向に話は進みます。

誰もが満足するような大きな流行がなくなっていき、中規模コミュニティがドンドン増えてきており、今後は東京もダウンサイズしていくというのが皆さんの予想。

そんな中、「ジモトの人々のつくる地域コミュニティとどのように繋がっていくのか」を議論している時の、中川大地さんが考える「東京スカイフォレスト」という案が面白かったです。

中川 たとえば、早晩スカイツリーが高さ世界一じゃなくなって廃れるのを見越して、東京ディズニーランドに対するディズニーシーみたいな関係で、もう少し落ち着いた中バコ的な公共機能を包摂するスピンオフ施設を、墨田区で小中学校や古い公共施設跡などの空いた土地に作りたいなと思っています。

名づけて「東京スカイフォレスト」。その名の通り、可能な限り多様な樹種をリアルに植林したり、AR技術で再現したりして“人口の大樹”たるスカイツリーの物語性を拡張する“森のテーマパーク”としてのアミューズメント性を呼び水に「自由に使えるジブリ美術館」みたいなイメージで神社や境内や公園、公民館、図書館などの機能を包摂してしまう、21世紀型の鎮守の杜です。

アメリカがディズニーの夢でショッピングモールを生んだのなら、日本には仮想的な自然回帰を訴えるジブリの夢があるやん、と。笑

僕はこの案、非常に面白いと思います。例えば、シンガポールにはガーデン・バイ・ザ・べイという、マリーナ・ベイ・サンズとシンガポール川河口近くにボタニカル・ガーデン風の観光スポットがありますが、あれはあくまで植物を楽しむ空間。

街の暮らしに疲れたから癒されにいく自然空間ではなく、日本だからこその自然と“共存”する空間。自然と街が分断されていない形で、中規模のコミュニティにも自由に使ってもらえるような場所が増えていったら本当におもしろいなーと。

最後に

ここで紹介しきれなかった話でも面白いものがたくさんありました。例えば、「西麻布や三宿といった駅のない場所が、穴場的に発展していった」という話なんかも非常に興味深かったです。

東京という街に興味がある人には、きっと満足してもらえる内容でしょう。

また、これから「都市」が向かう方向性を考える上でも学べるところが多いはずです。きっとこれからの都市は、ここに書かれているような「中規模向けコミュニティ」に奉仕するような形が主流になっていくでしょう。

そう考えると、必ずしも東京のような大都市だけがその主役になれるのではなく、地方都市もやり方次第では、東京を追い抜ける可能性がでてきた時代に入ったんだと思います。

地方都市の「今後のまちづくり」という視点から読んでみても、参考になるのではないかと思います。興味が有る方はぜひ!

いま東京と東京論を問い直す ―首都機能から考える21世紀日本― (PLANETS SELECTION for Kindle)

それでは今日はこのへんで!

ではではー!

鳥井弘文

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