なにげにこれが101本目の記事です、どうも鳥井(@hirofumi21)です。
今回は「プラットフォームに依存した個人のビジネスや制作活動は、本当にリスクがあるのか」ということについて、すこし考えてみようと思います。
プラットフォームに依存したビジネスのリスクって?
巷でよく言われるのは、「プラットフォームに依存し過ぎたビジネスと言うのは、プラットフォーム側の突然の変更に対して、システムや収益構造の変更を余儀なくされてしまうため、とてもリスクが大きい。」ということです。
分かりやすく例えると…
- AppleのiTunesストアでアプリの製作販売をしていて、Appleの急な規約変更により、今まで作っていたアプリが販売できなってしまう。
- Googleの検索エンジンのアップデートや規約変更により、今まで上位で表示されていたウェブサイトなのにも関わらず、ペナルティを受けてしまい、一気に順位が下がってしまう。
…というようなことです。
確かに、このように捉えると、プラットフォームに依存したビジネスは、非常にリスキーな行動に思えます。
しかし、僕は今回の「iTunesのアフィリエイトがリンクシェアからPHGに変更になる」という一件を受けて、実はそこまでリスクが大きいことではないんじゃないか、と思うようになりました。
以下で、このように考える具体的な理由を説明します。
iTunesアフィリエイト運営先が変更された事の概要
まず、ブログ運営やウェブサイトを運営していない人には、「今回の一件でどのようなことが起こったのか」全くわからないと思うので、ものすごく簡単に説明しておきます!
今までiTunesで販売されているコンテンツ(アプリ含む)を、ブログやウェブサイトで紹介して、その紹介料としての報酬(アフィリエイト)を得るためには、リンクシェアという代理店を通さなければいけませんでした。
しかし、今回Apple側の意向により、突然その代理店先がPHGというところに変更になったのです。
これの一体どこが不都合かといいますと、今まで蓄積してきたブログやウェブサイトの記事内のリンク先をすべて変更しなければいけないということです。
このブログのように、あまりiTunesのコンテンツを紹介していなければ、そこまで打撃は大きくないのですが、iTunesで販売されている楽曲やアプリをメインに紹介しているサイトは、まさに“寝耳に水”なわけです。
ブロガー同士が協力し、素早い対応策が出来上がる。
この一件が発覚したのが、日本時間で8月19日前後なのですが、そこから有名ブロガーさんたちを中心に、怒涛のようにブログ記事が書かれていきました。
まずは、提携先が変更されたことを伝える第1報。
blog.yo-yo.me: AppleがiTunesアフィリエイトの提携先をリンクシェアからPHGに切り替えた件
そしてこのニュースを受け、早速、対策方法を紹介したブログが書かれます。
[WordPress]iTunesアフィリエイトをリンクシェアからPHGに置換する方法
そうかと思えば、すぐにこんなプラグインまで作られてしまいます。
(プラグインとは、「プログラミングに詳しくない人でも、コレを使えばカンタンに書き換えられる仕組み」とでも捉えておきましょう。)
[WordPress] LinkShare を PHG のアフィリエイトリンクに置き換えるプラグイン「LinkShare To PHG」を作りました | ラクイシロク
更には、PHGの登録方法に関して、こんなに丁寧な記事まで!
Appleのアフィリエイトプログラム(PHG)への登録申請をする方法。10月までにリンクシェアから移行しておこうね。 | iPhone・Macの情報発信ブログ~Number333~
「上に政策あれば、下に対策あり」
この一連の流れを見て、僕はこの中国の有名な言葉を思い出しました。
「上有政策、下有対策」(上に政策あれば、下に対策あり。)
中国は1党独裁の国なのは皆さんご存知だと思います。そんな中、「国家に政策があれば、国家に牛耳られている国民にも、その政策に対応するための策がある」という意味で作られた言葉です。
最近では、中国国内の会社などでも、「上の決定事項について、下の社員がその抜け道を考え出す」という意味で広く使われていて、中国国内で頻繁に耳にするようになりました。
今回の一件でいえば、上はAppleであり、下はそのプラットフォームに依存しているユーザー(ブロガー)です。
上記で紹介したブログを書いている人たちは、この対策記事自体ではほとんど収益を上げておらず、自分の利益のために書いているわけではありません。
しかし他のブロガーは、彼らの書いた非常にわかりやすい記事を無料で読むことができますし、それを参考にして、自分たちのブログやウェブサイトを修正することが出来ます。
まさにユーザー同士で、抜け道になる“対策”を作り出した状態であると言えるでしょう。
最近では“ノマド”や“フリーランス”という言葉がひとり歩きしていて、個人で制作活動をしている人は、かなりリスクのある選択をしていると思われがちです。
しかし、長期的な視点で考えてみると、『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』という書籍でも書かれていましたが、“メガ企業と小さな起業家”と言うのは、社会的な変革からみても、これからもっともっと増えていくことは間違いないわけです。(詳しい理由は本書で。)
今後、今回のような問題が起きた際は、更に多くの“下の人々”同士がつながり合い、更に迅速に”策”が練られていくことになるでしょう。
なので、僕は、このブログの最初に提示したリスクというのは案外小さいものであって、未来は皆が考えているより遥かに明るいものではないかと、結構楽観的に捉えています。
個人が互いに知恵を出し合い、その都度臨機応変に対応していけば、メガ企業のインフラを使って、小さくてもやりがいのある制作活動を行っていくことが出来るでしょう。そして、そんな環境をうまく利用して、自由に生きていく人々はドンドン増えていくはずです。
このへんに関しては、僕も以前ブログに書いたことがあり、以下の記事にまとめてあります。
プラットフォーム戦略におけるグローバル企業と個人の共犯関係 | 隠居系男子
また、佐々木俊尚さんの『レイヤー化する世界』の中でも、この大きな歴史の変化については、大変わかりやすく丁寧に語られています。
プラットフォームに依存するビジネスのリスクを本当に背負うのは誰?
では、「すべての人々にとって未来が明るいのか」といえば、そうではないと思います。
この「プラットフォームに依存するビジネスのリスク」の被害をモロに受けるところがあります。
それが、個人の規模感を超えて、中〜大規模の会社となってしまったところでしょう。
具体的には、SEO対策を請け負っている企業であったり、アプリ制作会社と化してしまったところです。
企業となれば、制作物の規模も大きく、個人ほどの小回りも効かないので、即時対応するということは難しいでしょうし、そこに大きなリソースを割いてしまっている分、その分の回収もしないと割に合いません。
これまで述べてきた環境下で強いのは、あくまで小さく始めて、小さく何度も勝っていくというゲリラ戦的なモノを得意とする「個人」もしくは「数人規模のチーム」なんだと思います。
この流れは、様々な場所で既に語られていますし、以前もこのブログで書いたように、これを否定したいポジションにいるはずのDeNA創業者の南場さんなども著書の中で書かれていたことなので、まず間違いないでしょう。
南場智子著『不格好経営』はDeNAの軌跡を描く魂のこもった必読起業家本だ! | 隠居系男子
このように考えてくると、「プラットフォームに依存したビジネスはリスクがある」と一概に判断するべきではなく、その依存の程度(依存するプラットフォームを分散させている)や、その規模感も考慮しながら、各個人ごとにしっかりと判断していくべきなのでしょう。
あなたはこれからの将来、何に依存し、どの規模感でどのように戦いますか?今一度このことについて考えてみてはいかがでしょうか。
それでは長くなってきてしまったので、今日はこのへんで。
ではではー。
鳥井弘文