『明日、ママがいない。』騒動をきっかけに「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を今一度考えてほしい。

慈恵病院講演会

どうも鳥井(@hirofumi21)です。

ご縁あって、先日日本財団ビルで行われた「公開研究会 こうのとりのゆりかごと24時間妊娠SOS」に参加してきました。

『明日、ママがいない。』の放送中止を要請した慈恵病院・蓮田理事長の講演会です。

赤ちゃんポストは日本にひとつしか存在せず、正式名称は「こうのとりのゆりかご」。そして、この「こうのとりのゆりかご」が設置されているのが、熊本県にあるこの慈恵病院なのです。

講演会では、「こうのとりのゆりかご」が設置されるまでの経緯、この六年間の成果などが語られていました。

今回はこの講演会に参加してみて、気になった部分、多くの方もご存知ないだろうと思われる部分を中心に、いくつかピックアップして書いていきたいと思います。

慈恵病院への相談件数の増加

まず今回の講演会で一番驚いたのは、その相談件数の多さです。

慈恵病院は「SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口」を設置し、24時間無料で全国からの電話相談を受け付けています。2002年の開設当時は年間20件程度だった相談が、「こうのとりのゆりかご」設置からうなぎのぼりに相談件数が増え、2013年度は新規相談だけで1000件に達しました。熊本の一つの民間病院に全国からの相談が殺到している状況です。

引用元:2014年1月17日(金) 公開研究会「こうのとりのゆりかごと24時間妊娠SOS」を開催します | ハッピーゆりかごプロジェクト~特別養子縁組の普及をめざして~

昨年放送されたドラマ『平成25年度文化庁芸術祭参加 テレビ未来遺産 ドラマ特別企画 こうのとりのゆりかご~「赤ちゃんポスト」の6年間と救われた92の命の未来~』の影響もあり、近頃はさらにその件数が増加しているようです。

現在妊娠中の女性や育児に悩むお母さんからの相談がメインのようですが、それと同じぐらい養子縁組を希望する問い合わせも多いようです。

結果的に慈恵病院は「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置したことで、この6年間で92名の赤ちゃんの生命を救い、180件もの養子縁組を成立させました。

預けられた赤ちゃんは「こうのとりのゆりかご→乳児院→児童養護施設」と移される。

こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)というのは、あくまで赤ちゃんを一時的に預かるための場所に過ぎません。

預けられた赤ちゃんが慈恵病院に保護されるのは2週間までで、その後は乳児院という施設に送られます。

乳児院も名前の通り、乳児の間だけ預けられる施設であって、三歳からは児童養護施設に送られます。

つまり、赤ちゃんが「こうのとりのゆりかご」に預けられると、「慈恵病院(2週間)→乳児院(三歳まで)→児童養護施設」と移動していくというわけです。

この説明の中で特に印象的だったのは、「乳児院に預けられた子供は、その後児童養護施設や養子に行っても、心を開きにくいということ」です。

赤ちゃんポストと連携して活動する「命をつなぐゆりかご」の大羽賀秀夫代表理事は、講演会の中で以下の様に発言していました。

すべての子供は施設ではなく家庭で育つべきだ。家庭で育たなければ、子供は心をひらいてくれない。

私が養子で受け入れた女の子も、最初は乳児院に預けられ、その後養子として受け入れたが10年程度経過するまで、本当の意味で私達には心をひらいてくれなかった。

これは、児童養護施設に移る時の子供の気持ちを考えれば当然のことなのかもしれません。乳児院に預けられ、母親だと思っていた人との突然の別れがやってくるわけですから。

蓮田理事長は、これは「こどもにとっては精神的な虐待にも近いのではないか」と仰っていました。だからこそ、子供は出来ることなら一貫して育てられるべきであって、その考えから慈恵病院では養子縁組の成立に積極的なのだそうです。

個人的な感想なのですが、三歳といえば自身の甥っ子と同じ年齢です。あの子に置き換えて考えてみると、本当にそれがどれだけ惨いことなのかということがすぐに伝わってきました。

預けられた赤ちゃんのその後については調べられていない。

赤ちゃんポストにはこの6年間で92名の赤ちゃんが預けられていますが、子供たちのその後については追いきれていないようです。

もちろん、1000件以上の電話相談の先にいる子供たちも追えていません。

現状を把握できている子供は、あくまで相手から連絡が来た場合だけで、それ以外の子供たちは今現在どうなっているのか、ちゃんと育てられているのかどうかは、施設に預けられた子供、養子縁組が成立した子供関わらずわからないようです。

熊本の一病院の取り組みなので、そこまでは手が回らないということは、ある意味当然の事だとは思いますが、やはりこの辺に関しては行政の助けも受けながら、今後改善していくべきところなのだろうと感じました。

最後に

当時あれだけマスメディアを騒がせた「こうのとりのゆりかご」について、実は知らないことが多かったのではないでしょうか。

自分自身も講演会を聞きながら、知らなかったことが多かったのでとても反省しました。

マスメディアの一方的な報道だけで知った気にならず、本当に活動している当事者の方にお話を聞いて、その“実態”を正確に把握することが大切であると、改めて思い知らされました。

上記でご紹介した『こうのとりのゆりかご~「赤ちゃんポスト」の6年間と救われた92の命の未来~』という特別ドラマや、『「こうのとりのゆりかご」は問いかける―子どもの幸せのために』という本にも、今回ご紹介したような内容は詳しく書かれているので興味がある方はぜひ見てみてください。

さて次回は、この「こうのとりのゆりかご」の実態を踏まえながら、僕らが『明日、ママがいない。』騒動から何を考えるべきなのか、その点について詳しく書いていきたいと思います。

それでは今日はこのへんで!

ではではー。

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