どうも鳥井(@hirofumi21)です。
今月20日に発売された「SWITCH Vol.31 No.12 スタジオジブリという物語」。これが内容充実で驚かされました。
「責任編集:川上量生」ということで、全ての対談の聞き手が川上さんで、今までほとんど語られてこなかったジブリの話が今回の特集ではたくさん語られています。
本誌に掲載されている対談は以下。
- 伝説の男・高畑勲はいかに帰還したのか?西村義明✕川上量生
- 宮﨑駿の引退とは何だったのか?鈴木敏夫✕川上量生
- プロデューサー鈴木敏夫のアート性とは?糸井重里✕川上量生
- ジブリの未来はどうなるのか?川村元気✕川上量生
- ジブリの夢と狂気とは何なのか?砂田麻美
ひとつひとつの対談ごとにかなり内容が充実しているので、これは1本の記事では取り上げきれません。ですので、今回は1つの対談ごとに1本の記事を書いていこう思います。
今日は、『かぐや姫の物語』のプロデューサーを務めた西村義明さんと川上量生さんの対談を取り上げようと思います。
西村義明ってどんな人?
まずは西村さんのご紹介から。現在36歳と若手のプロデューサーでありながら、今回『かぐや姫の物語』のプロデューサー役を鈴木敏夫さんから任された人です。
しかも、その歳月はなんと8年間!つまり、西村さんが28歳の時から『かぐや姫の物語』を担当なさっていることになります。
スタジオジブリドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』の中でもかなりの重要人物で、この予告編で高畑勲さんについて印象的なセリフを喋っているのが西村さんです。
対談の中で印象に残った話
さて、ここからが今回の本題。
川上:とにかく完成度が滅茶苦茶高い。完璧な映画。
これは川上さんに限らず、既に試写会などで『かぐや姫の物語』を見た方々が皆口をそろえて言うことなのですが、今回の映画は非常に完成度が高い作品になっていると。
映画自体は、2時間17分もあるにも関わらず、実際に観てみるともの凄く短く感じるようです。
無駄なシーンが一切ないので、話を追っていると気付いたら映画が終わってしまうらしいです。話を端折っているわけでもなく、人間の感情も丁寧に描いているはずなのに、これだけテンポよく見れてしまう映画は今までにみたことがないと。
プロデューサーの西村さんでさえもその原因はよくわかっておらず、これは高畑マジックと言うしかなさそうです。
西村:狂気の沙汰ですけど、姫が疾走するシーン、あれ実は全て水彩画。
さて、高畑マジックと言えばコレ。今年の8月頃に、ジブリファンの中で震撼が走った予告編がありました。それがこの「姫が全速力で疾走するだけの予告」です。
http://www.youtube.com/watch?v=TKbXE-UhW1I
僕も『風立ちぬ』を観に行った時に、実際にこの予告編を映画館で観て、そのときの衝撃と言ったら尋常じゃありませんでした。
高畑勲さんが「かぐや姫」というぐらいだから、『ホーホケキョ となりの山田くん』のように、凄くおっとりとした感じの質感で描いているんだろうと思いきや、まさかのこのド迫力です。
そしてこのシーン、なんと全て水彩画で描かれているようです。
すこし引用してみます。
川上:高畑さんがやりたくても諦めた技術ってあったんですか?
西村:うーん・・・背景が水彩画だから、キャラクターの色付けも全部水彩画にしたかったんじゃないですか。
川上:それはすごいですね。笑
西村:部分的にはやっているんですよ。これも狂気の沙汰ですけど。予告編で姫が疾走するシーンがあるんですけど、あの辺りは全部水彩画で塗っています。アニメーターが描いた何百枚という絵を画用紙に印刷して、一枚一枚手作業で水彩で塗っているんです。それをやり始めた時に「この映画、絶対に完成しない」と思った。(笑)
水彩画だからという理由だけで、この映像にこれだけの迫力があるんだとは言い切れませんが、観客として完全に惹き込まれてしまった要因の一つには、一枚一枚が手作業で描かれているということも少なからずあったと思います。無意識のうちにそれを感じ取っていたのでしょう。
ぜひこれは本作の中で、ストーリーとしての繋がりのある場面として楽しみたいところです!
<追記>
実際に『かぐや姫の物語』を観て感想を書きました。
『かぐや姫の物語』は完璧で美しく、虚しくて残酷な映画。 | 隠居系男子
西村:作り終えてこれは声を大にして言いたい、鈴木敏夫さんはすごい!
やはりこの対談の最後は、お二人による鈴木敏夫論になっていました。
西村さんは8年間高畑勲さんと対峙してきて、その鈴木さんの凄さを身に沁みて理解したそうです。
色々なところで言われていることですが、「高畑勲さんは天才で気難しく、予想の範疇を超える方である」と。今回のドキュメンタリー映画の中でも、予告編の中の鈴木さんのセリフ「高畑さんは何考えているかわからない、理解不能だもん」というのが印象的でした。
1対1でこの人を説得しなきゃいけないという修羅場を何度も経験し、それは途方もなく難しい作業だったと。鈴木さんはそれを映画4本もやってきたのは信じられない。と西村さんは語っていました。
鈴木さんの業務をこなしてきた人間というのは、もちろん鈴木さんしかいなくて、今まではご本人の話からしかそのすごさは伝わってこなかったんです。この世界で宮﨑駿と高畑勲という天才を同時に30年以上コントロールしてきたのも、鈴木さん一人しかいないわけで…。
だから周りから「すごいすごい」と言われながらも、実際はその凄さは闇の中だったんですよね。
でもこうやって西村さんやプロデューサー見習いとして動いている川上さんが語り始めたことによって、鈴木さんがどういった仕事をこなしてきたのか、そしてそれが具体的にどのようにすごかったのか、それが最近になってやっと見え始めてきました。
糸井重里さんと川上さんの対談の中でもそれがメインで語られていて、僕らのような人間としては願ってもないことだなと。
最後に
他にも取り上げたかった部分はたくさんあったのですが、これだけでもブログとしては結構な文字数になってしまったので、他の内容はぜひ本誌で確認してみてください!
SWITCH Vol.31 No.12 スタジオジブリという物語
次回は、「宮﨑駿の引退とは何だったのか?鈴木敏夫✕川上量生」を取り上げようと思います。
それでは今日はこのへんで!
ではではー!
鳥井弘文
その他この投稿に関連した記事はこちら!
『夢と狂気の王国』はジブリを題材にしたドキュメンタリー作品史上最高傑作だった。 | 隠居系男子
cut11月号宮崎駿特集 内田樹「僕ね、宮崎駿さんの次回作って30分アニメのシリーズじゃないかと思う」 | 隠居系男子
cut11月号宮崎駿特集 宮崎駿は私たちに何を残してくれたのか。 | 隠居系男子