「カッコイイとは、こういうことさ。」どうも鳥井(@hirofumi21)です。
先日の「宮崎駿、長編映画監督、引退。」のニュースを受けて、今日の金曜ロードショーは、「紅の豚」が急遽放送されることになりました。
紅の豚は大人向けの作品
この作品、僕も非常に大好きな作品で中国語吹き替え版も含めると、かれこれ5回以上見ていると思います。
しかも、そのうち3回は20歳過ぎてから。そう、この映画、大人になってからみると、またその良さが引き立つんです!!
実際に、宮崎駿監督ご本人も「アニメは子供のために作るべきなのに、大人向けの映画になってしまった」と当時は後悔していたという逸話も残っています。このへんは、今回の『風立ちぬ』と似ていますよね。
あ、ちなみにこの『紅の豚』は、もともとは日本航空から制作を依頼され、「日本航空での機内上映用」として制作されていたのですが、長編化されたので映画公開に踏み切ったらしいです。スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫さん曰く、こんなに飛行機がバタバタと墜落するシーンがあるのに、日本航空提供で公開しても大丈夫なのかと不安だったそうですよ。笑
半藤一利と宮崎駿の『腰抜け愛国談義』
じつは、この『紅の豚』、現在公開中の『風立ちぬ』には無くてはならない作品だったんです。
もしかしたら、『紅の豚』を公開していなかったら、この『風立ちぬ』も生まれていなかったかもしれない、それぐらい重要な作品だったようです。
この詳細は以下の書籍で詳しく語られています。
この本は、SWITCHインタビュー 達人達(たち)「宮崎駿×半藤一利」というNHKの対談番組を書き起こしした書籍です。
時間の関係で、番組では放送されなかった部分も含め、たっぷりと対談の模様が収録されていて非常に読み応えのある作品になっています。
『腰抜け愛国談義』の中で語られた『紅の豚』
この本から、『紅の豚』に言及した部分を少し引用してみましょう。
半藤 堀越二郎の夢に出てくるカプローニという人は実在の人物なんですね。手元の資料によれば、1908年に創業したイタリアの航空機製造会社、カプローニ社の創設者にして男爵なんですね。その名はジョヴァンニ・バッチスタ・ジャンニ・カプローニ。宮崎 カプローニを登場させたのには、じつは面白いきっかけがあったんです。創業者の曾孫にあたる人が私達の映画の『紅の豚』を観て、「おまえ、もし要るならこれあげる」って、1936年のカプローニ社の社史を送ってきてくれたんです。図面だらけなんですが、これがとても面白かった。翼が9枚もあってエンジンが8つ付いているっていう、ハッタリの固まりみたいな飛行艇、カプローニCa.60の図面も、更にそれを作る過程も、写真とか絵がいろいろ載っていたんです。
半藤 その飛行艇、今度の映画に登場していますよね。あの飛行艇のことが社史に載っていたのですね。
宮崎 はい。あの飛行艇をつくっている最中のカプローニの写真も載っていました。カプローニさん、ものすごくげっそりした顔で写っているんです。全然意気軒昂じゃないんです。「これ、ダメ」って顔に書いてある(笑)。つまりダメだってわかっていてつくったんだと思いました。イタリアは当時、民間航空が発達しなかったですから。
半藤 たしかにイタリアは少々遅れていましたね。
宮崎 要するに需要がなかったんです。ですからカプローニ者は第一大戦後、生き残っていくためにハッタリが必要だった。それであれをつくったのだろうと思うんです。「これで大西洋を越える!」てんていう嘘八百を並べてね。あんなもんで大西洋を超えられるはずがないんですよ。
半藤 しかも「百人の乗客を乗せて越えてみせる!」といったのではなかったですか。
宮崎 そうです。実際は飛んでいません。だけど飛んだって言いはるんですよ。カプローニ社は。
半藤 大西洋どころではなく、空中に飛ぶことさえなかったのですか、あれ。
宮崎 1921年のテスト飛行の映像が残っています。このとき1回目でうくのに成功して、2回めの滑走で水面をちょっと離れて90メートルぐらい飛んだって言い張っています。そのときいっぱい映像をとっているというのに、肝心の飛行中の写真が一枚もない。そして二回目の滑走で壊れているんです。 壊れた機体が水面に浮いている写真はあるのですが。その途中、飛んでいるところを写したフィルムがない。滑水中の写真もない。これはもうカプローニおじさんが「撮るなっ」と命令したに決まっているんです。
半藤 あ、カメラを回すのをやめさせているわけですね。
宮崎 証拠も何もないので、しょうがないからいまでは飛んだことになってしまいました。
(中略)
宮崎 思うにジャンニ・カプローニという人はルネッサンスの人ですね。なんて面白い人だろうと感心するんです。レオナルド・ダ・ヴィンチもいろいろ考えましたが、つくらなかったものと、つくってもダメだったもののほうが多いんですから。
(中略)
半藤 映画でカプローニさんは、堀越二郎の夢のなかに登場しましたが、あれは宮崎さんの夢でもあったんですね。
宮崎 ルネッサンス人だとわかったら、ぼくカプローニっていうおじさんがだんだん好きになってきたんです。映画では、「これは美しい夢なんだ」といい、そのあとで「呪われた夢だ」って言ってもらいました。
以上。
どうでしたでしょうか。『風立ちぬ』をまだ観ていない人には、いまいちピンと来なかったかもしれませんが、観た人には非常に面白い内容だったと思います。
まさかカプローニさんが、ハッタリまでかまして飛べない飛行機ばかりつくっていた人だったとは思えないですよね!あの映画だけ見ると、当時の飛行機業界においてめちゃくちゃ優秀な設計者だったんだなーと思ってしまいますが、実はそうじゃなかったと…。
この本には他にも、夏目漱石を始めとした文学の話から、戦争と兵器の話、『風立ちぬ』の裏話、これからの日本が進むべき未来まで、本当に幅広く語られています。
当初は読む予定もなかったのですが、Kindle版で発売されていたので、気づいたらポチッとしてて、気づいたら読み終えていました。笑
非常に面白い本だったので、興味ある方はぜひ!
半藤一利と宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義
風立ちぬの原作はみんなブタ?
最後にもう一つだけ、付け加えておくと、『風立ちぬ』は…
宮崎駿が『モデルグラフィックス』誌上にて発表した連載漫画であり、その後、スタジオジブリによりアニメーション映画化された。映画は2013年7月に劇場公開された。宮崎が長編アニメーション映画の監督を務めるのは、2008年の『崖の上のポニョ』以来となる。また、宮崎が『モデルグラフィックス』に連載した漫画がアニメ化されるのは、1992年の『紅の豚』以来2作目となる。
という映画であり、原作となった漫画は登場人物が全員「ブタ」で描かれているんです。あ、菜穂子だけは人間なんですけどね。
こんな感じで。
やっぱりこうゆうところでも、この2つの作品は本当に切っても切れない関係の作品なんだと思います。
『紅の豚』をまだ観たことがない方、子供の頃に観て「あまり面白くないなー」って思った方、今晩はしっかりと観てみてください!
それでは今日はこのへんで!
ではではー!
鳥井弘文
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