「入込数」を重視する日本の観光地と「PV数」を重視するブログの相似点。

藻谷浩介対話集 しなやかな日本列島のつくりかた

どうも鳥井(@hirofumi21)です。

先日、@nosumaruさんに薦めてもらい藻谷浩介さんの新刊『しなやかな日本列島のつくりかた』という本を読みました。

藻谷浩介さんは『デフレの正体』や『里山資本主義』などを書かれた方で、このブログでも以前『里山資本主義』の方を取り上げました。

参照:地に足の着いた人々から新しい文化は生まれていく。を伝えたい。 | 隠居系男子

今回の新刊は、今の日本の課題をその道のプロフェッショナルの方々と各章ごとに対談する形式で、「商店街・限界集落・観光地・農業・医療・赤字鉄道・ユーカリが丘」をテーマに掲げられています。

今日はこの中でも特に気になった「観光地」について。

日本のどの観光地でも重要視されている「入込数(宿泊・日帰りをしない単純な来訪者数)」。この数字が、ブログやウェブメディア界隈で語られている「PV数」と非常に似通っている部分があると思ったので、その話と絡めつつ今日はご紹介してみます。

入込数を重視する観光地と、pV数を重視するブログ。

「観光地」の対談相手は地域経営プランナーの山田桂一郎さん。山田さんはスイスの国際山岳リゾートであるツェルマットで観光事業者として活躍したお方だそうです。

そんな山田さんは、日本の何処の観光地に行っても「入込数」を重要視する現状がとても不思議だと語ります。少しお二人の会話を引用してみましょう。

山田 どこの地域でも、とにかく「入込数」を重要視するのが、とても不思議でした。ヨーロッパの観光統計は全て延べ宿泊数が基本なのですが、私がツェルマットを紹介するときに「年間200万泊です」と言うと、「で、トータルで何人きてるの?」と必ず聞かれる。でも、その数を数えることにどれほどの意味があるのでしょう?

藻谷 泊まらない人が何人通り過ぎたって、その人達はほとんどお金を落としていかないんだから、数えたってしょうがないじゃないか、と。

山田 おっしゃるとおりです。観光バスでどっと乗り付けてすぐ立ち去る団体客が増えたところで、本当の意味で地域は潤いません。

藻谷 逆に、一人の人が一泊するのと四泊するのとでは、波及効果が全く違いますよね。つまり「何人きた」ではなく、「何泊した」で数える方が、実態に即していると。でも、日本ではどこもそれをやっていないですね。

いかがでしょう?正にブログの「PV数」に近いお話だと思いませんか。ブログの題名すらも覚えてくれないような、エンゲージメントの低い読者が何人読みに来ても、そのブログにとって何の意味もないのと同じです。

アクセスのしやすさを重視する観光地と、SEOを重視するブログ。

また、観光地のよくある不満に「うちの地域にも新幹線や高速のインターが来れば、地域が潤うのに…」という不満もあるそうです。

「早くアクセス出来たほうがお客さんは増えるに決まっている。」「人がたくさん来たほうが儲かるに決まっている。」というのが、彼らの主張らしいのですが、それも間違っていると山田さんは言います。

ツェルマットも大変交通が不便な僻地にあるにも関わらず、世界中から引きも切らず人がやってくるという現実があるそうで、逆に「遠くてお金も時間もかかるから、お金や時間にケチケチするような人は来ない、一度行けば長く滞在する。」のだそう。

日本でも徐々に沖縄の離島などでも同じようなことが起き始めているようです。

これもまさしく、ブログのSEO対策で議論される話と同じですよね。「SEO対策で上位に表示されれば多くの人に読まれるのに。」という主張全く一緒。

しかしブログで本当に大切な読者というのは、そういったところから流入してくる人たちではなく、一度読みに来てくれれば長く滞在してくれるような方たちのはずです。

「入込数」重視が招く負のスパイラル。

さて、このように日本の観光地が入込数ばかりを重視していくと、以下の様な負のスパイラルが起きてしまうと山田さんは警鐘を鳴らしています。

山田 観光庁ですら「訪日外国人旅行者1000万人」という目標数字を掲げています。もちろん、結果的に1000万人以上の外国人が来れば良いとは思いますが、最初に入込数ありきだと、それを達成するために、例えば近くて人口の多い中国から安いツアー客を大量に呼び込もう、そのために値段を下げよう、というような話になりかねない。

しかし、そうやってディスカウントを繰り返せば、当然サービスの質は低下し、満足度も下がります。その結果稼働率を上げれば上げるほど利益が薄くなり、リピーターも減っていくという負のスパイラルに陥ってしまう。

これをブログに置き換えた場合というのは、もう言わずもがなでしょう。

最後に

山田さんは、観光地として一番重要なのは「顧客満足度とリピート率」と断言しています。満足度をあげれば、お客様一人あたりの消費額も自然と上がるからです。

ブログでも全く同じことが言えると思います。大切なのは「読者満足度とリピート率」それをいかに高めていくことができるかに知恵を絞っていくべきなのでしょう。

ブログやウェブメディアの運営をしている人の何かしらの参考になれば幸いです。

それでは今日はこのへんで。

ではではー!

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