【寄稿】「インタビュー形式のローカルメディア」という在り方について

どうも阿部(@Fu_HEY)です。

東京でフリーライターをしながら、『IN&OUT -ハコダテとヒト-』というローカルメディアを運営しています。

〝人の声〟から見えてくる街の実態

IN&OUTは、僕の地元である北海道函館市にスポットを当てたローカルメディアなのですが、〝最近オープンしたカフェ〟や〝注目のイベント〟などの情報は一切掲載していません。

メインのコンテンツは「他の街で暮らしている函館出身者」と「他の街から函館に移住(もしくはUターン)してきた人」という2つのカテゴリーのインタビューです。

内側と外側という〝2つの視点〟を持った方々の体験談を通じて、函館という街を多角的に掘り起こし、進路や移住に悩む方々の背中を押すことができるようなメディアを目指しています。

これをローカルメディアと呼んでいいのかはわかりませんが、街のことを伝えるために最もリアリティがあるのは、最新情報やスポットの紹介ではなく〝人の声〟なのではないかとの考えから、こういったスタイルに至りました。

立ち上げの動機は、僕の個人的な体験にあります。

函館の高校に通っていた18歳の時に進路で悩み、東京で結婚し、子どもが生まれたことを機に移住について真剣に考えるようになりました。

「この先の暮らしを考えるにあたって、いろんな人の話を聞いてみたい」と思ったのが、インタビュー形式というローカルメディアの出発点です。

先日は、「他の街で暮らしている函館出身者」のひとりとして、鳥井さんにもインタビューをさせていただきました。

この『隠居系男子』が始まった経緯や、『灯台もと暮らし』の話、さらには知られざる学生時代の葛藤など、貴重なお話が満載のインタビューになっています。一度ご覧いただけると嬉しいです。

イントロダクション・鳥井 弘文さん| IN&OUT -ハコダテとヒト-

同郷の人間が発信するという〝説得力〟

このメディアを始めるにあたって、最も重要視したのは〝説得力〟でした。メディアの何が説得力を生むのか。

取材に対する姿勢や功績はもちろんですが、ローカルメディアを作るにあたっては〝同郷の人間が発信すること〟が大切な要素のひとつになるのではないでしょうか。

もし、僕が「広島の人をインタビューするメディアを作る!」と言ったとしても、「えっ!? なんで、アンタが?」となるのが当然の反応だと思います。

客観的な視点で街を紹介するという形式ならば話は別ですが、人から地元への愛着や不満を聞くためには、その土地の歴史や現状、細かい部分でいえば地名などを知っておく必要があります。

そうでなければ、地元の人の話に共感することも、疑問を抱くこともできません。さらに、そこからもう一歩踏み込んだ話を聞くためには、知識だけではなく、〝体験〟が必要になってくると思います。

具体的にいえば、自分もそこで暮らしていたという体験です。つまり、「自分も似たような経験があるからわかるよ!」という共感が一歩踏み込んだ話を引き出し、結果として記事に説得力をもたらすのではないでしょうか。

そういった考えから、IN&OUTの企画・運営はすべて函館出身者で行っています。

仕事を持ちながらメディアを運営するというかたち

僕は普段から雑誌やWEBの取材でインタビューなどを行っているので、記事を作るイメージはすぐにできました。

しかし、写真を撮ったり、WEBページを作る知識や技術はこれっぽっちもありません。東京の知り合いや業者に頼めば簡単に解決できる問題ですが、効率やクオリティを差し置いても〝地元出身者が一から作っている〟という説得力を優先したかったため、地元の仲間に声をかけてWEB制作や写真撮影ができる人を探しました。

そうして、ライター、デザイナー、カメラマン、プランナーという函館出身の4人(3人は東京在住、1人は函館在住)が集まり、今年の7月に無事スタートを切ることができたという流れです。

メンバーにはメディア運営の経験者はひとりもおらず、それぞれが自分の仕事(フリーライター、アンティークショップオーナー、アパレルスタッフ、会社員)をしながら企画、制作、運営を行っています。

普段は別々の仕事をしながら、お祭りの時には一致団結するという〝地域の青年団〟みたいな感じですね。

現在は、年齢や職業、函館への想いも異なる様々な方のインタビュー記事を作成するのが主な活動ですが、今後は地元企業と函館に移り住みたい人のマッチングや、中高生を対象に東京の第一線で活躍するデザイナーや美容師などを招いたワークショップを開催するなど、地元としっかり繋がった活動にも取り組んでいきたいと考えています。

最後に

IN&OUTは、「これから函館を出ようとしている人」と「これから函館で暮らそうとしている人」のための情報メディアというコンセプトでスタートしましたが、オープンから2ヶ月が経過して、思いもよらない感想をいただきました。

あるインタビュー対象者の親御さんから「インタビューを読んで、当時、あの子が何を考えていたのか初めてわかりました!」という声が届いたのです。これはまったく予期していない反応だったので、僕らもハッとさせられました。

確かに、人生を振り返ると親に話していないことはたくさんあります。特に思春期の悩みや葛藤などは、親に言いにくいものです。

大人になってからだと、「伝えたいことはたくさんあるけど、直接言うのは気恥ずかしい」というケースもあるのではないでしょうか。

そういった部分がインタビュー記事を通して親に伝わるというのは、まったく意図していなかった展開でしたが、とても嬉しい出来事でした。

まだまだ始まったばかりのIN&OUTですが、読者の方からの声に耳を傾けながら、地元に愛されるメディアに成長していければなと思っています。

よろしければ、函館とは関係ないという方も一度覗きに来てみてください!よろしくお願いします!

それでは今日はこのへんで。

ではではー!

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