最近、食品でも衣類の現場でも必ず言及される「生産背景の透明化」。
なぜ企業がそうするのかと言えば、いま多くのユーザー(消費者)が透明化を望んでいるからだ、と。
でもそれは本当なんでしょうか?
今日はそんなお話です。
中国人の学生がマイ箸を持ち歩いていた理由。
最初から話が脱線してしまうのですが、僕が中国にいた時の経験から書いてみたいと思います。
僕は、中国の北京で2年間暮らしていました。
その時に、北京にある大学構内に併設されている語学学校にも通っていて、その大学の学食にも頻繁に通っていました。
そこでとても興味深い光景を目にしたんです。
その学食には箸が用意されてあるのに、なぜか中国人の学生の一部はマイ箸を持ち歩いていて、用意されている箸を使おうとはしない…。
用意されている箸を使っているのは、僕らのような留学生ばかり。
それがとても不思議だったので、その理由を中国人の学生たちに聞いてみると「ちゃんと洗浄されているか不安だから」や「どんな洗剤を使って洗っているかわからないから」という理由からでした。
これは、日本人の僕からするとかなり衝撃的な事実でした。
中国人は、中国人のことを信頼していないんだなと。
日本でマイ箸を持ち歩いている人は、それほど多くはありません。
マイ箸を持ち歩いているひとも、環境保護の観点からで、「ちゃんと洗浄されているか不安だから」という理由でマイ箸を持ち歩いている人はほぼいないでしょう。
その時に、これってとても幸せなことだなよなあと思ったのです。
なぜなら、日本人は少なくとも「箸の洗浄」という面では、日本人のことを信頼しているわけですから。
いま「安心の基準」が大きく変化してきている。
さて、本題に戻ります。
「生産背景の透明化」を消費者が望んでいるというのは、本当なのでしょうか?
確かに、生産背景を透明化して欲しいという消費者の声は多いと思います。
しかし、本当に消費者は毎回その生産背景を自らがチェックして、そんな保健所みたいな作業を自らしたいと思っているのでしょうか?
そんなことはないですよね。
なぜ透明化を求めているのかと言えば、安心して購入したいからです。
そして、今その「安心の基準」が大きく変化してきているということなのでしょう。
参照:「トトロのおなかのうえ」のようなコミュニテイが求められている。 | 隠居系男子
最後に
消費者の本当のニーズは、いつの時代も「作り手に対しての信頼」です。
究極の話、生産背景なんて一切透明化してくれなくてもいいから、安心して購入することができればそれでいい。
少なくとも、僕の願いはそこにあります。
生産背景の透明化というのは、遅かれ早かれブロックチェーン技術のようなものを使って必ずトラストレスになっていく。
その時でもやっぱり重要になってくるのは、「作り手のセンスや美意識から生まれる信頼」なんだと思います。
参照:その人のセンスや美意識によって選ばれていく時代。 | 隠居系男子
杓子定規に生産背景の透明化することで、お茶を濁すのではなく、「ズルいことはしない」という理念や意志の表明のほうが本当は大切になってきているのではないでしょうか?
今日の話が、いつもこのブログを読んでくださっている皆さんにとって少しでも参考になる内容であれば幸いです。