【第5回】後継者育成に興味のない消費者に、いかに届けるか?「Alt81」が目指すこれからの世界。

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どうも鳥井(@hirofumi21)です。

今回も、蔵前にある革小物ブランド「Alt81」高崎真行さんのインタビュー記事の続きです。今日で最終回、最後はかなり熱い話になりました。

前回までの記事はこちら。
【第1回】蔵前に店を構える革小物ブランド「Alt81」は、なぜウェブコンテンツに力をいれているのか? | 隠居系男子

【第2回】革小物ブランド「Alt81」がウェブコンテンツに力を入れるようになったきっかけとは? | 隠居系男子

【第3回】なぜ蔵前という街を選んだのか?「Alt81」が蔵前に溶け込むまで。 | 隠居系男子

【第4回】職人が生活していけるような世界をつくりたい。「Alt81」高崎真行の挑戦。 | 隠居系男子

「買って、気づいたら応援していた」というお客さんを増やしたい。

ーー 消費者側の人たちの中にも、そういう課題(職人が生活していけるような世界をつくりたい)を解決したいって想いはきっとあると思うんですよね。

高崎 そうですね。

ーー なので、何か応援したい!っていう気持ちの方も多いと思うのですが、その応援の仕方がいまいちわからない。

例えばクラウドファンディングみたいなシステムを使ったり、あとはそういう若手のものづくりの担い手さんが出品しているようなイベント、「モノマチ」みたいな感じのイベントに参加して、応援する気持ちで購入するっていうのはあるとは思うんですけど。なかなか日々の日常の中で、どうやって応援すればいいのかなってわかんなかったりもするのかなと…。

高崎 買って応援みたいな形も、大きな可能性はあります。結構されてる方もいらっしゃいますし。で、これはまだわからないんですけど、そういう方が増えてそれが常態化して、「応援するために買う」形と、好きなものを買った結果、実は応援していたみたいな感じの「買ったら応援していた」みたいな2タイプができるんじゃないか、と。

で、どっちの方がお客さんにとっては買いやすいのかなって思った時に、僕はもしかしたら後者なのかなって思っちゃったんですよ。

ーー あー、確かにそうかもしれませんね!

高崎 僕も最初は前者でした。僕達ってこういうことやってるんだ、だから買ってくださいみたいな気持ちは強かったんですけど、徐々にこう「じゃあ買う」みたいな雰囲気に違和感を感じてきて…。

なんて言うんですかね。すごい難しいですけれど、例えば「友達だから買うよ!」とかって言われると、「その理由で買われてもなぁ…」って思ってしまうんですよね。本当に欲しいと思った時に、買って欲しいと。だから僕は「友達でも安くしないよ」っていうスタンスでいるんですが、その話にも近くて。

自分が欲しいと思ったものを買ってもらう。で、あとから、実はあなたの買ったものの、例えば「10%くらいは若手の育成の方に振り分けてるんですよ」っていう話をした方が、なんだろなあ、お互い変なプレッシャーにならないっていうか。まあ、現状それができていないので、まだ偉そうなことは言えないんですけど。

フード・ケータリング「MOMOE」と「Alt81」の意外な共通点。

MOMOEイメージ

画像引用元:編集女子が私らしく生きるための食コンテンツ作戦会議を開催しました! | 灯台もと暮らし

ーー いや、でも今のお話を聞いて、一つ思い出したことがありました。僕ら、よくイベントとかもやったりするんですよね。そのイベントの時に、フードケータリングのMOMOEさんっていうその界隈ではかなり有名な、すごくきれいな見た目からおいしそうなゴハンを出してくれる方にお願いしているんですけれど、彼女も同じような事を言っていました。

MOMOEさんが使っているお米は、実は僕らがよく取材に行ってる島根県海士町っていう、過疎地域の食材を密かに使っていたりとか。あとは、野菜とかも彼女が繋がりのある応援したい農家さんから仕入れていたりして。

MOMOEさんいわく、見た目からおいしそう!って思ってもらえて、パシャパシャ写真に撮りながらSNSにアップして、食べてみたら本当においしくて、結果それが地域にも還元されていくっていうことが私のやりたいことなんです!って。

高崎 まさに、全く一緒ですね(笑)。

ーー そうですよね。今のお話を聞いていて、全く同じことを言っているなって思ったんです。でも、結局それが今Instagramで何人くらいかな、でもかなりフォロワーさんが沢山いるんですが、もうなんていうんですか、誤解を恐れずに言うと、ボランティアとか次世代育成とかに全く興味がなさそうな、キラキラしたものが好きそうな女性たちにグサグサ刺さっていくんです。

高崎 そうなんですか!

ーー 高崎さんも、そういったモデルを作ろうとされているっていうことですよね。

高崎 そうです。興味のある方は自分達でそっち側に行ってくれるんですよ。何か支援したいとか、役立ちたいとか思ってる方は、たぶん自分でドンドンそれを選択していってくれるので。僕は、もちろんそこも大切にしたいんですけど、僕が何かしなくてもたぶんやってくれると思うので、いかに興味のない人たちに、振り向いてもらうのかっていうことを意識しています。

ーー そうですよね。そのほうがいいと思います。

高崎 言い方悪いですけどね。でもそれで結果的に全く興味がなかった人たちが、ちょっとでもこっちに興味を持ってくれるのではないかなと。別に革小物じゃなくても、何かしら消費するときに、ちょっとバックグラウンドを気にするみたいな。「これ、どこで作られてるんですか?」とか。そうなってくれれば、一歩進んだって言えるんじゃないかなって思ってるんですよ。

一人から捻出できる金額ってどうしてもたかが知れているので。日本中のたくさんの人がそういう気持ちになってくれると、日本が変わってくんじゃないかなと。日本を変えたいとか思ってるわけじゃないんですけどね。(笑)

お客様も職人も販売員も、関わってる人みんながフラットな世界をつくりたい。

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ーー では、最後に今後どんな夢を描いていて、野望みたいなものがあれば、ぜひお聞かせください。

高崎 そうですねぇ。やっぱりものづくりの仕事だけで生活が安定する人が増えると良いですよね。そういう人達の話を聞いてみると、「Alt81の仕事やってました!」とか、「あの仕事をやっていてよかったっす!」みたいなことを言ってもらったりしたら嬉しいですね。

ーー なるほど。あ、でも職人さんの気持ちが先に出てくるっていうのは素晴らしいですね。一般的なメーカーさんの場合、どうやって職人さんにかかるコストを減らして、お客様に還元するかみたいな所が一番重要視されるわけじゃないですか。

でも職人さんが幸せになってお客様も幸せになって、「三方良し」じゃないですけど、そういう形を最初に描いているっていうのは、素晴らしいなって思います。

高崎 そうですね、今言われて初めて気が付きましたが、僕はずっとその気持ちでやってきました。確かに一般的な話じゃないんだなっていうのも、今の話を聞いてわかりました。

ーー 高崎さんは、なぜそんな風に考えるようになったんですか?

高崎 前職で、職人と二人三脚の形でやらせていただいていたんですけども、そこの会長が職人なんですが、入社時に色々な話してくれて。話をする時に会長の気持ちがすごく伝わってくるんです。職人さんの苦労話なんて、もう涙ながらに語って、僕ももうもらい泣きしちゃうくらい、結構しんどい時代があったという話をされてたのが、今もすごく残ってるんですよ、自分の中に。

他の、カバン以外の職人さんの話も聞くと、その職人さんもやっぱり苦労してらっしゃって。お金の面でいうと、なんでここまで仕事の単価が下がってしまうのかなって。売っている人が別に楽をしているとは思いませんが、結構所得差があるんですよね。

売り場の人もすごく良い仕事してるとは思いますが、作り手が居なかったら、始まらないでしょ!ていう想いもあって。全体のバランスを考えるようになったんですよね。

だからこそ、たぶんこの関係性をもっとフラットにしたいって思っているんでしょうね。何を聞かれても、「いや、職人がね・・・」みたいな話をするのは、そこを一番最初に考えないと、何事も成り立たなくなっちゃうという想いがあるのだと思います。

お客様も職人も販売員も、関わってる人みんなたぶんフラットで、いいんじゃないかなっていう。「IchitogoManufacture」という社名が、まさにお客様のために、関わる皆が協力して最高のものづくりにしよう、そしてお客様に納得して買ってもらってWin-Winの関係でいこうよみたいな話から作ったので。

ーー それこそ、先ほどのバブルの中で生まれたひずみをもう一度改めていこうというところ、イノベーションを起こしていこうってところに繋がる話ですよね。

高崎 そうですね。僕らみたいにやってる人達がこの地にたくさん居るっていうのを知れたので、その中で僕らができることは何かなっていう風に、今はより具体性をもって取り組めているので、やっぱり蔵前で良かったなって思います。

ーー あっ、そういう街の持つ力もあるってことですよね。

高崎 やっぱり作る人が多いですから。作ることだけで生活できる人がたくさん居るんですよ、この街には。なので、こちらからお願いして、向こうもお願いされてしっかり上下関係のないビジネスとして成り立つ。そういう関係性がすごく良いなあって。

◯◯してあげてるとか、◯◯してもらったとかっていうのではなくて、Win-Winという感じができるのっていうのは、いいですよね。みんなで高みを目指していこうぜ!みたいな。

当たり前ですが、お客さんは革や作りについて知らないことが多いんです。「革ってこういうものなんですよ」っていうのをじっくりとお話していって、ひとりでも多くの人にその良さをわかっていただけると、理解が広まって、よりよい形になっていけるんじゃないかなぁと思っています。

ーー 本当にその通りだと思います。作り手・売り手、そして買い手も一緒になって、今よりも良い環境を作っていくことができると良いですよね。

今日は本当にどうもありがとうございました。

★★★

インタビューはこれで終わりです。

明日は、編集後記を書いてみようと思います。

それでは今日はこの辺で!

ではではー。

公式サイト:Alt81 -日本の考え方を形にする-「Alt81 Web Shop」

(写真撮影:タクロコマ

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