どうも鳥井(@hirofumi21)です。
今日も前回の記事に引き続き、『Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール』から個人的に気になった部分を紹介してみます。
参照:製品に値段以上の高い価値を与えられる「IKEA効果」が目からウロコだった! | 隠居系男子
今回は、「認知的不協和」について。今の時代ほど“自分が下した判断”に頭を悩ませてしまう時代はないと思います。
どれを選んでも正解のようにも思えるし、どれを選んでも不正解のようにも思う。そして意を決して選んだ後も、選ばなかった全ての選択肢が正解のように思えてしまう、そんな時代です。
今日は、「認知的不協和」という観点から人間の心理を理解しつつ、新しい提案やサービスを行う上でユーザーの「認知的不協和」をどのように捉えるべきなのか、そんなことについて少し考えてみようと思います。
認知的不協和とは?
まずは、認知的不協和とはどんなことを指すのか、本書から引用してみましょう。
イソップ寓話のとある物語を紹介しよう。お腹を空かせたキツネが偶然、枝からぶら下がるブドウを見つける。キツネは必死にブドウを取ろうとするが、何度跳んでも届かない。苛立ったキツネは「あのブドウは酸っぱいに違いないから、別に欲しくない」と考えるようになる。
この物語のキツネは、ブドウに対する認識を変えることで自分を慰めている。甘く熟した美味しいブドウがあるのに、自分はそれを食べられないと考えることは、あまりに不快なので受け入れられないのだ。
折り合いをつけるために、キツネはブドウに対する認識を変更し、それによって心理学者が「認知的不協和」と呼ぶ精神的苦痛を和らげているのである。
認知的不協和の具体例
寓話の例だけだとあまりピンと来ない方もいるかもしれないので、実際に僕らが経験したことがあるような具体例も引用しておきます。
はじめてビールを口にした時、あるいははじめて辛い食べ物を食べてみた時のことを思い返してほしい。美味しいと感じただろうか。おそらくそれはないだろう。人間の身体はアルコールや辛い物を食べた時に感じるカッとした熱さの原因であるカプサイシンに拒絶反応を示すようにできているからだ。
人間にはこれらの嗜好品にする拒否反応が生まれつき備わっているのだが、にもかかわらず、繰り返し口にすることで徐々に好きになっていく。人は、他人がそれを味わっているのを見たり、少しずつ自分で試したりすることで時間をかけて慣れていくのだ。
他の人達が大いに楽しんでいるものを、自分は好きになれないという認知的不協和を避けるために、私達は、ゆっくりと、自分が好きでなかったものに対する認識を変えていくのである。
他にもWikipediaの中にある「喫煙と禁煙」の話も非常にわかりやすいので、ぜひそちらもご覧になって下さい。
参照:認知的不協和 – Wikipedia
課金制のソシャゲの例
さて、この考え方を最近の事例、課金制のソシャゲのに当てはめると以下のようになります。
時間を費やしたものに対して、人は『これは価値があるに違いない。なぜなら、自分がそれに時間を費やしてきたから』と、考えるようになります。さらにまた、これまでに費やした時間を考慮して、新たに20ドルをつぎこむ価値があるに違いないと考えます。
そして、20ドルをつぎこむと、自分は価値のないものに20ドルを支払うようなバカではないから、これには十分な価値があるに違いない、と考えます」買い物をしようとする時、プレイヤーは意味のないものにお金を払うのは賢明でないことは理解している。
それにも関わらず、ブドウが取れないことを、酸っぱいに違いないと諦めるキツネと同じように、プレイヤーは自分の欲しいものは間違っていない、つまり自分はバカではないと信じ込ませるために、その消費行動を正当化する。つまり、ゲームをプレイし続けるために、お金を払い続けることになる。
これは認知的不協和から脱しようとした結果、逆にドツボにハマった例ですが、ソシャゲで課金をしたことがある人にはとてもリアルで耳の痛いお話だと思います。
「このような心理的な変化の過程を辿る傾向があるのが人間だ」ということは覚えておいて損はないでしょう。
最後に
今の時代ほど、認知的不協和の状態が起こりやすい時代はありません。
「自分で選び取った道を答えにするまでだ!」と言ってしまえばカッコイイのですが、その境地に辿り着くことができるのも、このような認知的不協和を避けるために自己の正当化を繰り返した結果です。
そう考えてくると、サービスを提供する側も自社のサービスだけでなく、ユーザーの認知的不協和を避けるための要素も同時に提供していく事が、今の時代において求められていることなのだろうなと思います。
それも「あの芸能人も使っている!」とか、「今話題の〜」といった安易な広告をマスメディアを通して流すだけではなく、もっと根本的な問題を解決してあげられるような方法で。
「エシカル消費」だったり「ストーリーマーケティング」のような事も、その類いに当てはまるような気もしますが、それすらもまだまだ浅はかなような気がしています。
なにはともあれ、この人間心理をとらえた上で、何か新しいものを提案するのとしないのとでは、雲泥の差が出てくると思うので、今回ご紹介してみました。
更に詳しく知りたいという方は、本書を手にとってみて下さい。
それでは今日はこのへんで!
ではではー!