昨日の大ゲリラ豪雨の中、はるばる五反田に行ってきました。どうも鳥井(@hirofumi21)です。
その理由は、このイベントに参加するため。
祝「風立ちぬ」公開! 川上量生×東浩紀対談 「川上量生の見た宮崎駿と鈴木敏夫~コンテンツとプラットフォーム~」 | PeaTiX
前々から、このブログやTwitterなどでも公言していますが、僕はジブリが大好きです。特にプロデューサーの鈴木敏夫さんが好きで、常に彼の行動には注目しています。
今回の登壇者
ニコニコ動画などで有名なドワンゴの創業者である川上量生さん。
彼は、コクリコ坂ぐらいから「スタジオジブリ プロデューサー見習い」として、鈴木敏夫さんの下で働き、今では宮崎吾朗監督の次回作(内容は未発表)の正式なプロデューサーを担当なさっている方です。
対談の場を提供してくれたのは、早稲田大学教授であり、ゲンロンカフェを運営している東浩紀さん。ニコ論壇や『朝まで生テレビ!』にもよく出ている日本の若手思想家。
その2人が、「宮崎駿と鈴木敏夫について」対談するっていうんだから、もうこれは行かないわけにはいきません!!
内容は非常に刺激的で面白いものばかりでした。もちろん、この2人が話している以上、話はあっちゃこっちゃといってしまい、ジブリの話は全体の3割もなかった気がしますが…。笑
対談時間も4時間と、大変長丁場だったので、このブログに内容のすべてを書くことは到底出来ませんが、今回は特に印象に残った2人の言葉を3つだけ紹介しておきたいと思います。
1.川上:「僕はジブリの作品より、ジブリという“現象”がおもしろいと思う。」
これに関しては、そのような事を直接的ではなくとも、以前からほのめかしていたので、「あーやっぱりか」という印象。
東さんは今回の『風立ちぬ』を見て、あまりパッとしなかったようで、その話の流れから、「川上さんは一体ジブリ作品のどの辺りに魅力を感じているの?」という質問から、川上さんがこのことに言及。
川上さんいわく、「ジブリは作品が出来る過程が一番面白い」のだそう。
「宮崎駿・高畑勲・鈴木敏夫」この3人が作り出す現実世界・その人生のほうが作品よりもずっと面白いと。
「具体的にどんなこと?」と東さんに聞かれて、「ここでは言えないことばかりだ!笑」と話を濁していましたが、でもなんとなく想像すればわかる気もしますよね。きっと笑いあり・涙あり・喧嘩ありの、天才たちが繰り広げる本当の意味での人間ドラマなのでしょう。笑
2.東:「現実を動かすフィクションをつくりたい!」
これはジブリとは直接関係ないのですが、川上さんが東さんに対して「ゲンロンカフェ含めゲンロンは何がやりたいの?」と聞いた時、東さんの答えがこの言葉。
「現実を動かせるフィクションというのは決してアニメや小説など、そういった作品だけではなく、たとえば未来都市計画なども現実を動かす可能性があるひとつのフィクションである」と。
この考え方というか、捉え方は僕にとって目からウロコでした。
どうしても、現実を動かすフィクションというのは右脳を使ったような職業の人たち、いわゆるクリエイターと呼ばれるような人たちだけが創り出せるものだと思いがちです。
しかし、左脳を使ったような人たちでも、そのようなモノは創り上げることが出来るというのが東さんの主張です。
それはつまり、空想上の「表現力」だけではなく、論理を伴った「ストーリー」でも、現実を動かすだけのフィクションは提示できるということなんだと思います。
3.川上:「広告とは”共通ワード”を作り出す為に打つもの」
この話は、鈴木敏夫さんが「試写会」を非常に重視するという下りの中で、出てきた話です。
鈴木さんの必勝セオリーの一つとして、「試写会の回数(タダで見せる回数)が多ければ多いほど映画はヒットする」というものがあるそうです。
実際に、ジブリの興行収益で初めて記録的なヒットを飛ばしたのが『もののけ姫』らしいのですが、この作品では10万人規模の試写会を行ったようです。
一般的によく言われる話として「良いものを作れば、届く人には届く。」というのがありますが、これは半分正解で半分ハズレであると。
確かに、良いものを作り、それをネット上などエンドユーザー(消費者)がリーチ出来る範囲に置いておけば、届いて欲しいと考えている相手には届きます。彼らは往々にしてネットリテラシーが高かったり、自分たちが欲しいものがどこにあるのか、自分たちで検索する能力が高いからです。
しかし、そのような届き方であれば、そこで完結してしまう。
そのエンドユーザーの方々は、自分たちが消費することで満足してしまい、「ソレ」を広げようとはしてくれません。
なぜなら、人はなかなか「ソレ」を知らない人には、勧めようとはしないから。
全く知らない相手に、それでも必死で何かを伝えようとする時は、よっぽどそれが好きで「何が何でも知ってほしい!」と思う時か、伝える側に何らかの見返りやメリットがあるときぐらいです。
もしここで広告が存在し、ちゃんとマスに届いていれば、その広告が共通ワードとなり、口コミのハードルは一気に下がります。人々は容易に自分がいいと思ったモノを相手に伝えることができ、そのモノが広く広がっていくと。
これは「なるほどな!」と思いました。
広告とは、そのモノの「良さ」を多くの人に知ってもらうための媒体ではなく、あくまでもそれが口コミにつながりやすい共通ワードとなり、その一助となればいい、いや、むしろそうあるべきだと。
このように考えると、マスに対する広告も未だに大きな意味は持つし、良し悪しは別として「炎上マーケティング」のようなネガティブのものでも、結果的にあれだけ広がってしまうのもわかるような気がします。
まとめ:生のライブに足を運ぶ重要性
今回の対談、実はあまり期待していなかったのが正直なところです。ニコニコ生放送や、普段聴いているラジオ番組などと同等か、もしくはそれ以下だと勝手に予想していました。
しかし結果は、期待を大きく上回る内容。後半は東さんがワインを飲み過ぎて完全に酔っ払ってしまい、ただの酔っ払いの絡みと化していましたが、それも普段のメディア出演からは見ることができない姿のひとつ。
「ここだからいいますが〜」とか「Twitterでは絶対に書かないでくださいね!」などと煽りながら自分の話に興味を持たせようとする手法は、本当に上手く惹き付けているなーと純粋に感心させられました。
今後またこのような機会があれば、せっかく今は日本に居るんだし、積極的に参加してみようかなと。
ライブ会場でしか味わえない「場」の独特な雰囲気もありますし、やっぱりこれこそが「東京」で生活しているという大きなメリットの一つだと思います。
このような非日常感は、良い気分転換にもなると思うので、興味がある人はぜひ行ってみてはどうでしょうか。
それでは今日はこのへんで!
ではではー!
鳥井弘文
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