どうも鳥井(@hirofumi21)です。
今日は9月18日、柳条湖事件の日です。昨年、中国で大規模に行われた反日デモから丁度1年になります。
そして、今から丁度1年前、僕は北京の日本大使館の前にいました。
あの当時の状況を今振り返ってみて思うこと、そして大手メディアでは報道されませんでしたが、あの反日デモで一番貢献した日本人が蒼井そらさんだったことについて、今回は書いてみようかと思います。
現地でみた反日デモの状況
柳条湖事件の日というのは、日本人にはあまり馴染みがありませんが、中国では毎年反日感情が高まる日です。これは学校教育からくるものであり、中国人は皆この日が柳条湖事件の日だと認識しています。
当然、去年の反日デモもこの日に向けて呼びかけが行われ、去年の9月18日、最大級のデモ行進が北京大使館の前で行われました。
当時、僕は日系ベンチャー企業で働いており、この日は丁度近くの会社に打ち合わせにに行く予定があったので、社長と2人で実際のデモを見に行くことにしました。
駅に降りるなりすぐ、中国人が日本の国旗にバツ印をつけたものを持っていたり、日本を罵る汚い言葉が書いてあるTシャツを着ていたりと、空気が違うことはすぐに分かります。
「ここで日本語を喋ったら殺される」という殺気はお互いすぐに察知して、社長とはその後ずっと中国語で会話をしていました。
中国人は何に対してデモをしているのか?
この現場を観に行って、僕が一番強く感じたことは「一体中国人は何に対してキレているんだろう」ということです。
これに関しては、一年前、大手メディアや専門家、個人のブログまで様々な考察がなされ、どれもそれらしい理由がたくさん並んでいました。
しかし、あまりにも色々な要素が複雑に絡み合いすぎていて、正直何が一番の理由なのかはわからない。デモ行進をしている中国人を見ていても、激しくキレている人もいれば、パレードがあるからとりあえず来てみたというような人まで、本当に様々です。
数日後、実際にデモに参加した中国人の友人と飲みながら話をしましたが、中国人ですら、いったい自分たちは何に対してキレているのか、理解しきれていない様子でした。
それでも、彼がしきりに主張していたのは、「あれは国家と国家のことであり、俺とお前の問題ではない」ということ。
これは、不安に感じている僕のために言ってくれた言葉ではあると思いますが、若い中国人の間では、このようにしっかりと冷静に捉えられる側面も持ち合わせているということは、皆さんにもぜひ知っておいて欲しい事実です。
ある中国人店主の言葉
知っておいて欲しいついでに書くと、あの日中が緊張状態にあるとき、僕が小さなお店の中国人店主に言われた言葉は今も忘れられません。
その時、VPNを使って、無理やり僕がtwitterでつぶやいたものを載せておきます。
中国からVPN使って書き込んでいます。さっき北京の商店に行って買い物をしてきました。「袋くれますか?」って恐る恐る聞いたら、店主のおじさんが「もちろんあげるよ!」って満面の笑顔で言ってくれ、そのあと俺の身なりの気付いたのか「君はどこの国の人間だい?」って聞いてきました。
普段なら問題が起きないようにすぐに「韓国人だ」って答えるんですが、今日は真後ろに明らかな韓国人が並んでいて「韓国人だ」とも言い出せず、苦笑いで「日本人だ」と答えたら、店主が何のためらいもなく「我们是好朋友!(私たちは良い友だちだ!)」と言って笑顔で握手を求めてくれました。
本当に本当に嬉しかった。こんな対応をしてくれる中国人もいます。最近だと日本でも中国人に嫌がらせするような人が増えているとニュースで見ますが、ぜひとも優しくしてあげて欲しい。この状況下で優しくされたら絶対に忘れません。現に自分がそうだから。本当に強くそう願います。
反日デモで中国人を嫌いになった現地の日本人は少ない。
去年の反日デモ以降、中国を更に嫌いになったという日本人は多いと思います。あれだけ、テレビやネットで中国人の暴徒化した映像が繰り返し流されれば、それも無理はないでしょう。
しかし、あの時実際に中国にいた日本人で中国を嫌いになったという人は、意外と少ないのではないでしょうか。
確かに僕も、タクシーの乗車拒否とか「小日本!日本鬼子!」と罵声を浴びさせられたこともありましたが、上で述べたような素晴らしい店主もいます。
結局、様々な思いを抱く人間が、どちらの国にも存在し、国際交流と一言にいってもその最小単位は一対一の個人の対話でしかないんだと思います。
企業、国家を超えた蒼井そら
実は今回の記事で、一番書きたかったのはこの部分。
日本では「セクシー女優」という理由からか、ほとんど報道されませんでしたが、あの反日デモで日本人として一番活躍したのは、間違いなく蒼井そらさんです。
実は、中国での蒼井そらさんの知名度は絶大で、中国人の若い男の子だったらまず知らない人はいないと思います。
今現在の中国版twitter「ウェイボー」のフォロワー数はなんと1438万人。桁が1つ違いますよね。昨年の反日デモ時も既に1300万人のフォロワーがいました。
その人気の高さから、反日デモの時はこのような横断幕が掲げられるほど。
訳:尖閣諸島は中国のもの、蒼井そらは世界のもの
国家も企業もだんまりを決め込んだ。
反日デモ発生後、日本大使館も現地の日本メディアも、完全にだんまりを決め込んでいました。また、ユニクロやイオン、セブン-イレブンなど中国に広く進出している企業も営業時間を短縮するなど、被害を最小限に止めようと努力するだけで、何か呼びかけをするような行動は一切行っていません。
「国として、企業として、余計なリスクを負うようなことはしない」というのは、運営上決して間違いではないと思います。しかし、それがあまりにも無力で、同じ日本人として虚しく感じてしまうことだったのは事実です。
蒼井そらがつぶやいた「日中友好」の文字
そんな状況下の中で、蒼井そらさんだけが、ウェイボーを使って動きました。
なんと反日デモの気運がめちゃくちゃ高まっている中、この画像をウェイボーでつぶやいたんです。書道が得意なようで、これは彼女の直筆です。
その後、「なぜ日中の順なんだ!?」と反発する声をうけ、すぐさま上の画像もつぶやきました。
これがなんと、13万回を超える转发(リツイート)と、20万件を越える评论(コメント)が付きました。
どれぐらいスゴいことなのかというと、その時のウェイボー全体のHOTワードで一位が「蒼井そら」になるほどです。
とにかくスゴい大反響。もちろん、反発する声から、支持するものまでその内容は様々だったのですが、これが中国に与えた影響、少なくともウェイボーに与えた影響は少なくありません。
当時のデモの過激さから言えば、下手をすれば命を狙われる可能性だってあったはずです。命が狙われなくても、せっかく築き上げた中国での知名度を失う可能性は非常に高かったと思われます。
しかし、彼女はそれに臆することなく、自分の良心に従い、自分の独断であの画像をつぶやいた。そのスゴさです。
結局事なきを得て、今も彼女は中国で様々な活動を続けおり、更に人気を高めていますが、僕はあのつぶやきと、あの反応の大きさを間近で観た瞬間、冗談抜きに思い出してしまったのが、あのナウシカの一節です。
その者蒼き衣を纏いて金色の野に降りたつべし。
失われし大地との絆を結び、ついに人々を清浄の地に導かん。
このセリフと蒼井そらさんが、完全に僕の中でオーバーラップした瞬間でした。
個人が力を持つ時代
僕が大学生の頃、twitterやFacebookが流星の如く現れ、様々なメディアで「SNSは個人が主役になる革新的なツールだ!」と騒ぎ立てられていましたが、正直自分はかなり懐疑的でした。
しかし、反日デモで蒼井そらさんがこのような形で、企業も国家も越えていった瞬間を目の当たりにして、その考えは一変。個人がSNSで与える影響はこれほどまでに大きいんだと…。
ジャック・アタリの書いた『21世紀の歴史』という本の中に、「トランスヒューマンと呼ばれる慈愛に満ちた人間がこれから登場していくだろう。」という記述がありましたが、正にあの時の蒼井そらさんはトランスヒューマンそのものだったと言えます。
最後に
今一年ぶりにこの反日デモについて振り返ってみると、色々と怖い思いもさせられましたが、自分にとっては本当にいい経験だったなと思います。
今まで培われてきた様々な価値観が、あのデモを目の前にした瞬間、音を立てて崩れ去り、それと同時にこれからの時代の流れがなんとなく見えたような気がしました。
だからこそ、若い人にはぜひ海外に行ってほしいなと強く願います。もちろん将来的には日本で定住するとしても、一度自分の目で確かめてくるというのは、とても大切なことだと思います。日本に篭っている限り絶対に体験できないコトがそこにはあるはずです。
当然、危険なところには行くべきではないし、挑発的な行動は絶対にとるべきではありません。しかし、現地に行かないとわからないことが必ずあります。どれだけネットで高画質の動画を編集なしのまま見たとしても、現地に行って初めてわかることがあります。
なにか少しでも気になる場所があれば、まずは行ってみてください。
自分だって、中国に行く前は反日デモを見に行こうなんて、これっぽっちも思っていませんでしたが、「とにかく気になる」という理由で中国に行ってみたら、こんな一生に一度みられるかどうかという状況を、自分の目で見てくることが出来ました。
まずは直感に従って行動してみることです。
だいぶ長くなってしまいました。それでは今日はこのへんで!
ではではー!
鳥井弘文
その他この投稿に関連した記事はこちら!
「すごい勢いで日本化するアジア」を読んで思うこと。 | 隠居系男子
シンガポールから日本が学ぶべきところは“矛盾はあっても、葛藤はない”その姿。 | 隠居系男子