どうも鳥井(@hirofumi21)です。
先日「ナタリーってこうなってたのか」を読了しました。
これはウェブメディア運営者は必読の書だと思います。もちろん広く「ウェブ上でコンテンツを出している方」にもぜひ読んでみて欲しい一冊です
今日は本書の中から、ナタリーの「サイト運営方針」について少し取り上げてみようかなと。
「“ナタリーという生き物”の意志に従って、やるべきことを粛々とやり続けるだけだ。」
この意味が気になる方は、是非最後まで読んでみてください。
ウェブメディアで大切なことは、誰がやっても回る体制づくり
まずは、僕が考えるウェブメディアの在り方についてカンタンに述べておきます。僕は、ウェブメディアというのは「立ち上げ段階の思想が全てである」と思っています。それはつまり0を1にする段階。
その後の1から10に発展させる段階は「誰でも回せる体制」にしていくべきだと。
集合知というか、多くの人が関わってボトムアップ型で作り上げていく“媒体”だからこそ、属人性は一切排除していくべきだと考えています。
そこが個人のブログとは大きく異なるところでもあるのでしょう。個人ブログは、「意識高い系の文章とは何か、気付きの過程を晒す意義について」でも書いたように、個人の思考過程そのものを書いていくこともできると思いますが、ウェブメディアはそうではない。
属人性はドンドン排除していくべき
確かに、一般的によく言われているように「メディアは編集長に属人的であるべきだ」っていう発想は非常によく理解できます。
しかし、それは従来のメディアや紙の雑誌のように色をガンガン出していくようなメディアの場合に通用する話であり、ウェブメディア、特により多くの人の興味関心を持ってもらうことを目的としているフラットな形のウェブメディアであれば、属人性はドンドン排除していくべきだと考えます。
そしてそれは、“そのウェブメディアらしさ”とも決して矛盾はしません。
「ナタリーとしてこれはアリかナシか」という絶対的な基準
このことに関して、本書の中で大山卓也さんがその見解を非常にわかりやすく書いてくださっていたので、紹介してみようと思います。
非常に大切な部分なので、少し長いですが引用してみます。
ナタリーは属人性の高いメディアであってはいけないと考えている。自分ひとりでできることには限りがあるし、他の誰かに託さなければこれ以上の拡大は実現できないだろう。
ナタリーの設計思想は確かに自分自身の中から生まれたものだが、スタート以来、自分が行ってきたのはその「ナタリーイズム」とでも言うべきスタンスを、全体に浸透させる作業だった。そしてそれは現在かなりの部分で成功したと思っている。
もちろん媒体の方向性を示し、記事に関する決定権を持っているのは各ナタリーの編集長だ。しかし自分も含めて、現在ナタリーにいる3人の編集長、もっというと記者1人ひとりの中にも「自分」の上位概念として「ナタリーらしさ」というものが存在しているのだと思う。
矢沢永吉さんの名言で「俺はいいけどYAZAWAはなんて言うかな?」というものがあるが、それと同じ。自分の価値判断や「編集長がどう言うか」以前に、「ナタリーとしてこれはアリかナシか」という絶対的な基準があり、皆がそれに従って仕事をしているのがナタリーの現場なのだ。
(中略)
自分は「ナタリーというサイト」を作ったのではなく、いってみれば「ナタリーというシステム」「ナタリーというスタイル」を作ったのだと思っている。このスタイルが確立し、スタッフ間で共有できるようになった今、これを自分の手の中にとどめておくつもりはない。
ナタリーのポリシーは、日々現場でポップカルチャーの最前線を追いかける若い世代が引き継いでいくべきものだし、個人サイトではなく企業運営のメディアである以上、そうやって継続・拡大されていくべきものだと思う。
今の自分の興味は「ナタリーらしさ」をどうやって更に広げ、より多くのカルチャーにどう貢献していくかに向いている。ナタリーが自分という枠を越えて、世の中にとって有用なものとしてもっと広がってほしい。
最後に
自分たちが正しいと思うことをただひたすらに淡々とやってきたウェブメディア、それがナタリーなのだと思います。
本書の中で何度も登場している「まっとうでありたい」「みっともないことをしたくない」「ダサイことはしたくない」という言葉がそれを強く物語っています。
まさに以下の記事で書いたような“約束”を静かに守ってきて、“やりたくないこと”はやらずに“面倒くさいこと”だけを徹底的にやってきたのがナタリーというメディアなのでしょう。
参照
若者へ。静かに約束し、静かに守り続けるということ。 | 隠居系男子
「やりたくないこと」と「面倒くさいこと」の違いとは? | 隠居系男子
こういったメディアが社会から認められ、求められ、更に拡大していくチャンスを得られるということは大変素晴らしいことだと思います。
「メディアが100年に一度の転換期」と言われている今の時代だからこそ、ナタリーのように本当にプライドを持って信念掲げてやっているメディアが、ウェブメディア業界の先頭を引っ張っていって欲しいと切に願います。
ウェブメディア運営者には本当にオススメできる一冊でした。ぜひ手にとってみて下さい。Kindle版も今日から発売です!
それでは今日はこのへんで。
ではではー。