現代を生きる旅好きの若者に読んで欲しい!東浩紀著『弱いつながり 検索ワードを探す旅』

弱いつながり 検索ワードを探す旅

どうも鳥井(@hirofumi21)です。

先日「夏休みに読んでおきたいウェブ系書籍5選」という記事の中でご紹介した『弱いつながり 検索ワードを探す旅』を読了しました。

結論から言うと、久しぶりに「間違いなくオススメ!」と言える本でした。

ものすごくわかりやすく読みやすい上に、分量も少ない。しかし、読み終えた後にとても考えさせられる内容で、決して一筋縄ではいかない奥深い本となっています。

今日はこの本がどのような内容だったのかを、簡単にご紹介してみようと思います。

「より深くネットに潜るために、リアルを変える旅」

本書の主張を一言で言ってしまえば「今、旅に出よ!」ということです。

ただし、自分探しの旅ではなく、新たな検索ワードを探すための旅。

ネットを離れてリアルに戻る旅ではなく、より深くネットに潜るためにリアルを変える旅。それが東さんの主張する今実践するべき旅のスタイルです。

これだけでは一体何のことだかサッパリわからないと思うので、以下で順を追って説明していきたいと思います。

ネットにある情報は、自分から探しに行かなければ手に入らない。

ネットに存在する情報というのは、新聞やテレビとは違い、自然に配達されてくるものではありません。目的の情報に辿り着くためには、まず検索ワードを自分で打ち込まなければいけません。

つまり、「その情報が見たい」という欲望そのものが、僕らの中に存在しなければいけないわけです。

ありとあらゆる情報がネット上でストックされていくこれからの時代において、その情報がウェブ上に公開されているかどうかというよりも、「検索の欲望」をどう喚起するかこそが重要な問題になるのだと、東さんは主張します。

旅の目的は「検索の欲望」を喚起するために身体を「拘束」すること。

ではどうやってその「検索の欲望」を喚起させるのか。そのためには身体を「拘束」するのがいちばん良いと、東さんは言います。

少し本書から引用してみましょう。

「ツーリズム」(観光)の語源は、宗教における聖地巡礼(ツアー)ですが、そもそも巡礼者は目的地になにがあるのかすべて事前に知っている。にもかかわらず、時間をかけて目的地を回るその道中で、じっくりものを考え、思考を深めることができる。観光=巡礼はその時間を確保するためにある。

旅先で新しい情報に出会う必要はありません。出会うべきは新しい欲望なのです。

いまや情報そのものは稀少財ではない。世界中たいていの場所について、写真や記録映像でほとんどわかってしまう。にもかかわらず、旅をするのは、その「わかってしまった情報」に対して、あらためて感情でタグ付けをするためです。いまや海外旅行なんて必要ない、グーグルストリートビューで写真を見れば十分じゃないかというひとは、このことを見落としています。

情報はいくらでも複製できるけど、時間は複製できない。欲望も複製できない。情報が無限にストック可能で、世界中どこからでもアクセスできるようになったいま、複製不可能なものは旅しかないのです。

スマートフォンの発達や、ウェブサービスの充実により、情報へのアクセスのしやすさは格段に上昇しました。しかし、検索エンジンに一体自分はどんな言葉を打ち込めばいいのか、それに気がつくためには、部屋に閉じこもってネットばかり見ているのではなく、身体を移動させて“拘束”させないといけません。

そのためにこそ、「今、旅に出よ!」というのが本書のテーマとなっているわけです。

最後に

この本の中には、なぜ東さんがそう考えるようになったのか、そのきっかけとなった海外での体験なども書かれています。

そこに書かれているアウシュビッツ収容所での経験は、昨年僕がカンボジアに行った時に訪れた「トゥール・スレン虐殺博物館」で得た気付きととても類似しているものでした。また、バンコクにある「ターミナル21」という大型ショッピングモールの話も、自分が訪れた時に同様のことを考え、とても共感させられました。

自分自身も旅が大好きなので色々な旅に関する本を読んできましたが、この本ほどしっくりくる本には、今まで出会ったことがありません。

実際に自分が旅してきた中で感じたこと、漠然と思い描いていた「今の時代に旅をする意義」のようなものを見事に言語化してくれている本だと思います。

今一番面白い旅のスタイルを提案しているのは、高城剛さんです。しかし、高城剛さんの主張は良くも悪くもぶっ飛んでいます。本書のいいところは、高城さんの主張ほどぶっ飛んでいないところ。

「村人」「旅人」「観光客」という括りが本書に出てくるのですが、高城さんの主張は「旅人」的な発想で、一般人には実践しにくいところがあります。

しかし、本書で主張されている旅のスタイルは、「観光客」として旅をするスタイル。誰でも実践できるレベルのお話です。そして、今すぐに僕達が実践するべきは間違いなくこのスタイルです。その更なる発展形として、高城剛さんの主張するところの旅になっていくのでしょう。

なにはともあれ、ぜひ現代を生きる旅好きな若者にはぜひ読んで欲しい一冊です。Kindle版もありますよ!

それでは今日はこのへんで。

ではではー。

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