鈴木敏夫『風に吹かれて』は鈴木敏夫史上最高傑作となった。

風に吹かれて

どうも鳥井(@hirofumi21)です。

今日は、鈴木敏夫『風に吹かれて』をご紹介します。

この本を購入したのは8月20日で、1ヶ月かけてやっと読み終わりました。脳内で、全て鈴木さんの声に置き換えながら毎日少しずつ読んだので、こんなに時間が掛かってしまいました…笑

内容は、本当に「面白かった!」の一言に尽きます。是非皆さんにも手にとって欲しい作品なので、自分が読んでみて思ったことを「まえがき」「あとがき」を引用しながら少し書いてみようと思います。

聞き手は雑誌『Cut』の渋谷陽一

こちらの本は、鈴木敏夫さんが書いているわけではなく、雑誌『Cut』などでお馴染みのロッキンオンジャパン社長・渋谷陽一さんがインタビューしたものを文字に書き起こした形になっています。

参照:Cut9月号『風立ちぬ』宮崎駿3万字徹底インタビューにみる渋谷陽一のあざとさ。 | 隠居系男子

この渋谷陽一さんの聴き方が本当に巧いし、例のごとく“あざとい”!

「渋谷陽一さんがどんな方か知りたい!」っていう方も、ぜひ上の記事を読んでみてください。

渋谷陽一が書いたまえがき

まえがきは渋谷さんの文章から始まります。コレが本書を的確に捉えているので、少し長いですが引用します。

宮崎駿も高畑勲も、鈴木敏夫が居てこそ作品が作れる、ジブリは鈴木敏夫が居てこそのジブリなのだ、と言う人は多い。僕もそう言ったりする。しかし、実際のところ鈴木敏夫が何をしているのか、それは他の人をもって替える事は不可能なのか、それを正確に言える人はいないのではないか。その疑問に鈴木敏夫自らが答えるのがこの本だ。

中略

僕にとって鈴木敏夫は決して取材しやすい人ではない。何故なら鈴木敏夫が話すのは彼が話をしたい事で、こちらが聞きたいことの答えではない。こちらの話して欲しい事は、鈴木敏夫はそう簡単に話してはくれない。例えば、鈴木敏夫とは何者なのか、などという質問に絶対に答えてはくれない。その困難に挑戦し、きっと他では語られない発言を聞くことに成功したのがこの本だ。というか鈴木敏夫自身、気付いていない鈴木敏夫の真の姿にまで届いた本になっているのでは、という自負がある。

中略

鈴木敏夫は宮崎駿や高畑勲と出会えて幸福だった。そして僕達も、この三人が出会い、作品が続けれられている時代に生きる事ができて幸福だと思う。

ひと通り読み終えてみて、ここに書かれていることに、ひとつも嘘はないと断言できます。たぶん、ご本人が自伝的な本を書かれたとしても、これほどまで濃密な本にはならなかったでしょう。鈴木敏夫ファンとして、渋谷陽一さんに感謝してもしきれないほど「よくぞ鈴木敏夫という人間をここまで暴いてくれた!!」って思えたのが、本書です。

鈴木敏夫が書いたあとがき

あとがきは鈴木敏夫さんの文章になっています。こちらも「鈴木敏夫さんが、今回の本でいかに丸裸にされてしまったのか」がわかる良い内容だったので、少し引用してみます。

今回の企画は、渋谷陽一ありきで始まった。最初は、『Cut』でこれまで受けたインタビューをまとめる。これで一冊になるんじゃないか。僕にしても。仕事化柄、インタビューは数多く受けるが、彼のそれは群を抜いて刺激的だ。一言で言えば、いつだって独断と偏見に満ちている。

中略

そして、インタビューが始まった。冒頭、僕の子供時代から質問が始まった。告白すれば、違和感が生まれた。僕としてはナウシカの前夜がスタートのはずだった。あったとしても『アニメージュ』の話しからだ。僕は質問に答えながら「やばい!」と思ったが、今更抵抗してもしかたがないと覚悟を決めた。

中略

そしてこのインタビューがゲラになった頃、彼から電話を貰った。「僕のインタビューの中でも三本の指に入るものになった。」嬉しそうだった。勝ち誇っていた。
彼と僕は2歳違い。同世代に属する。ずいぶんと昔、彼の使った言葉が印象的だった。「だれしも時代の洗礼を免れることはできない」おそらく20年以上前のことだろう。それを僕はずっと憶えていた。同時代を生きたからこそ、わかることがある。それを信じて、僕は今回の企画に乗ったのだった。

鈴木敏夫史上最高の本

鈴木敏夫さんは、今まで何冊か本を出されてきて、仕事道楽や、映画道楽ジブリの哲学、ラジオ番組『鈴木敏夫の ジブリ汗まみれ』をまとめた書籍なんかもあります。

このなかにも、僕が好きな本がいくつもあり、ひと通り目を通してきましたが、今回断言できることは、この1冊が鈴木さんの集大成であり、間違いなく最高の1冊であるということです。

2013年は、ジブリの3人が集大成をつくった年

最後になりますが、正直この本を読み終わったあとの喪失感は半端じゃなかったです。すごく複雑な気持ちでした。

なぜなら、この本が出てしまったことによって、ジブリの三人、宮崎駿・高畑勲・鈴木敏夫の3人全員が、今年集大成を作り上げてしまったからです。

宮崎駿さんは『風立ちぬ』で長編映画の監督を引退することを先日宣言されましたし、高畑勲さんも今回の『かぐや姫の物語』が最後になるだろうと言っています。

更に、三人に迫ったドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』も11月に公開が控えています。「2013年はなんというジブリイヤーなんだろう!」という喜びと同時に、これで本当に一旦終わっていくんだなっていう寂しさもあり複雑です…。

…いや、でも寂しさばかりを感じていても仕方ありません!

来年には『借りぐらしのアリエッティ』で監督をなさった米林宏昌さんの2作目も公開されることが決定しました。

ジブリ次世代を楽しむためにも、今年はしっかりと3人の集大成の世界にどっぷり浸らせてもらいましょう!

それでは今日はこのへんで!

ではではー。

鳥井弘文

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