どうも鳥井(@hirofumi21)です。
前回、「cut11月号宮崎駿特集 宮崎駿は私たちに何を残してくれたのか。」の記事でも書きましたが、今月号のCutでは宮崎駿特集が組まれています。
今回は前回の宣言通り、その特集の中から「内田樹と高橋源一郎、宮崎駿の引退とこれからを考える」という対談を取り上げますよ!
もちろん、司会は渋谷陽一さん!
(渋谷陽一って誰っていう方はまずこちらを!:Cut9月号『風立ちぬ』宮崎駿3万字徹底インタビューにみる渋谷陽一のあざとさ。 | 隠居系男子)
この三人の対談から、気になったところをいくつかピックアップして、自分の思ったことを少し書いてみようと思います。
宮崎駿の次回作は30分アニメのシリーズ?
内田樹さんいわく、今アメリカでは長編映画の制作本数が激減しているようです。その理由は・・・
- テレビドラマの予算が昔に比べて桁違いに多くなった。
- テレビドラマのほうが尺が長い。映画だと2〜3時間しかない。
- 映画は「客が入るものをつくれ」と出資者がうるさい。
ということみたいです。
あのJ・J・エイブラムス監督もインタビューで「だからさ、ちゃんとしたものは、テレビで見てもらいたいわけよ。」と答えるほどらしく…。
この一連の流れを受けて、内田樹さんはこう予想します。
内田:僕ね、宮崎さんの次回作ってもしかすると30分アニメのシリーズじゃないかと思うよ。全26回とか。30分✕26回で13時間の大作!
これが本当に実現するかどうかはわかりませんが、これは夢のある話ですよね!
一体どの枠で放送するんだ?って考えてみるとまた面白くて、「NHKか?日曜の朝か?それとも深夜枠か?」と色々と妄想が膨らんでしまいます。笑
前回「あまロス対策に『アルプスの少女ハイジ』が効く。『かぐや姫の物語』の予習にも。」の記事でも書いたように、今時間を見つけて『アルプスの少女ハイジ』を観ているのですが、やはり一つ一つの描写が非常に丁寧なんですよね。だからこそ、長編映画の2時間という枠に囚われない宮崎駿さんの作品を観てみたいなと思ってしまいます。
「破綻こそ宮崎駿」論
既に皆さんご存知かと思いますが、宮崎駿さんの作品は、『もののけ姫』から『千と千尋の神隠し』の間で大きく変化します。
何が変わったのか。そう、ストーリーが破綻するようになったんです。
もののけ姫以前は、しっかりと2時間の枠の中でストーリーを組み立てていて、起承転結が存在し、物語のバランスが保たれていました。
しかし、千と千尋の神隠し以降は、ストーリーの展開が長編映画のセオリーとは全く違う作られ方をされていて、完全にバランスを逸しています。
「ロジックから感性に移り変わった。」といえばわかりやすいかもしれませんが、この部分がアンチジブリの人たちから批判されるのも事実です。
特に『ハウルの動く城』や『崖の上のポニョ』なんかはその代名詞で、そこがこの2作品で賛否両論が大きく分かれた原因です。
しかし、お三方はこのストーリーの破綻こそが宮崎駿の真髄だと言います。
高橋:宮崎さん、ある時期から破綻するようになったでしょ。僕、破綻するようになってからが大好きで(笑)。つまり、もうコントロールしてないんだよね。芸術作品の自由って・・・・自由には責任が伴うとかさ、自由は完全にコントロールしなきゃいけないとかいわれるけど、作る人間だってある種投げやりに「もうどうでもいいや」と思える瞬間もあって。本当にすごいものは、そういう投げやりなところがあるものなんじゃないかと思っているんです。
僕が、「破綻」で一番最初に思い浮かべた他の作品は井上雄彦さんの『スラムダンク』。あれもある意味で破綻していますよね。色々な噂があるので、ここでは深く掘り下げませんが、あとは『幽遊白書』なんかもそう。
高橋さんがおっしゃるように、僕も「本当にすごいものは、そういうなげやりなところがあるものなんじゃないか」と思います。
「努力して最後までしっかりとやり遂げる」というのが日本人の美学として存在しますが、一方でこうゆう考え方もあると。
またこの考え方は「ニコニコ動画を運営するドワンゴ会長・川上量生著『ルールを変える思考法』が完全に星5つだった!」の中で書いた「売れるコンテンツや真のヒットは、わからないもの・説明できないもの」という話にも繋がるところと言えます。
最後に
今回取り上げた部分以外にも面白い話がたくさんありました。
- ジブリは空想的社会主義であり、宮崎駿さんはコミュニティを形成し、一種の家族経営をしていた人だ。
- 『となりのトトロ』のサツキとメイのお父さんと、『風立ちぬ』の堀越二郎の顔が一緒だというところから、『風立ちぬ』は『となりのトトロ2』説。
- 宮崎駿の引退はバンドの解散と同義。サザンオールスターズはサザンオールスターズという役割を担わされるし、ビートルズはビートルズの役割を背負わされていたように、宮崎駿は長編アニメーターという役割を背負わされていたので、それを一回解散し、ソロになったんだ。
などなど、書き始めれば本当にキリがないほど、興味深い話が目白押しです!「さすが、この三人が集まっただけがあるな!」と思わされる濃密さでした。
ぜひ、書店でこの部分だけでも立ち読みしてみてください!ネット上では見ることができないジブリ論が、本誌で展開されていますよ。
それでは今日はこのへんで!
ではではー!
鳥井弘文
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